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ホワイト・ゴッド 少女と犬の狂詩曲のJのレビュー・感想・評価

4.4
・物語★★★★
・配役★★★★
・演出★★★★★
・映像★★★★
・音楽★★★★★

こ、これは…‼︎(゚o゚;;
一体どうやって撮影したのか…。
犬たちの“演技”がとにかくハイレベル!🐶

少女“リリ”と、その飼犬である“ハーゲン”。🚶🏼‍♀️🐕
雑種であるが故に課せられる重税を良しとしない父親により、リリはハーゲンと無理矢理引き離されてしまう。
人間の都合で居場所を転々とし、拘束具やムチ、さらには薬物を使ってまで闘犬“マックス”へと育て上げられていくハーゲンの姿は、痛々しく切ない。

そして、愛くるしかったハーゲンは、ついに野性の本能を目醒めさせる。
牙と歯茎を剥き出しにして、身勝手な人間を睨みつけるその目は、あのハーゲンであることを疑うほどに恐ろしく変貌している。

一方で、思春期の鬱屈を大人や教師にぶつけ、夜遊びやクスリに興じるリリたち若者の姿もまた、狂犬と化したハーゲンたちの姿とダブっているようで、その対比が興味深い。

“恐ろしい物事は 愛を必要とする
ーR・M・リルケ ”
この冒頭の引用をどのように解釈するかは様々だろう。
“最愛の友から、身勝手な人類たちへ”
その怒りと哀しみに満ちた復讐をなだめることができるのは、やはり犬たちにとっての人間の愛、少女にとっての父親の愛なのかも知れない。

リリが所属する吹奏楽部が奏でる音楽を、劇中に効果的に活かす演出はこの上なく見事だ。

解体された牛の臓器や半ば腐敗した野良犬など、間接的だが極めて攻撃的な映像は、序盤から不穏な雰囲気を効果的に煽り立てる。
その反面、舞台はハンガリーの首都ブダペストから程近い郊外だろうか、街並みを見降ろす丘の風景が実に美しい。
街中を無尽に走り回る無数の犬たちの映像は、迫力というより衝撃に近い。
🐕🐕🐕🐕🐕🐕🐕🐕🐕🐕🐕🐕🐕


(※以下、ラストシーンについての言及アリ)

パッケージにも描かれているのはラストシーン。
リリがとった思いもよらない行動と、それに対する犬たちの反応は、観る者の多くが予想し得ず、驚かされるだろう。
(邦題のサブタイトルが、ややネタバレではあるが…。)

ハーゲンをはじめとする犬たちの大群が、リリとともに朝靄の青白い光に優しく包まれる光景は、あたかも我々人類に何かを訴えているようだ。

“時間をあげよう”
ラストシーンで呟く父親の一言は、自らが奪ってしまったリリとハーゲンのかけがえのない時間の大きさを思い知らされた、身勝手な人類の懺悔なのかも知れない。

エンドロールのバックでひたすら厳かに流れる音楽が、心に重く響いている。
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