encomiment

皆殺しのバラッド メキシコ麻薬戦争の光と闇のencomimentのレビュー・感想・評価

4.0
麻薬カルテルが国を凌ぐほどの軍事力と資本を味方につけてしまい、もはや何ともしようがなくなった現代メキシコを描くドキュメンタリー。

麻薬がらみの殺人事件が毎日おきる国境の町で、黙々と働く警官の暗くて深い諦念が伝わる。同僚が殺され命を落とすが、捜査のしようもない。

いっぽう、マフィアを讃える歌「ナルココリード」で成り上がろうとするアメリカ人歌手は、現地メキシコのリアルを知るためにマフィアの所にホームステイ。鼻孔の周りを真っ白にしながら自分の夢を語る。

どうしようもなさすぎるメキシコの現実を観続けていると、これが「映画」だという認識が心理的にクローズアップされていく。
映画的なカメラワークで切り取られたメキシコの風景を、いつの間にか映画として認識していた。ある種の現実逃避である。観客が現実逃避せずにはいられない程の現実が、克明に映し出される。

麻薬がらみで息子を殺された母親が「どうしてこうなった」と泣きながら呼びかける終盤、光が射し込んだように感じたが、ここに映る現実の前では、あまりにも弱い光だった。
encomiment

encomiment