カトゥ

独裁者と小さな孫のカトゥのレビュー・感想・評価

独裁者と小さな孫(2014年製作の映画)
5.0
陳腐な表現になるが、「胸に刺さる」映画だった。
見終わった後に、特大のため息が劇場のそこかしこから。僕もまた、深く考え、ため息を吐く。

単純な残酷物語でも、もちろんハートウォーミングな話でもない。地獄巡りのような、怒りと許しの話なのかもしれない。

でも思う。最後に示されたひとつの言葉さえ、独裁者の老爺にとって救いになったのだろうか。いや、彼がどうなったのかは、はっきりと示されていない。
そして孫も、あの貧しくて混乱する国民達も。
何もかもが手遅れだとしても、幼い孫は生き続けて欲しい。身勝手ながらそう思えた。


中央アジア、東欧、それとも南米?荒野と廃墟と近代的なビルと大仰な公共建築の、どこかで見たような、いかにも独裁国家といった風景。そこで繰り広げられる、たった数日間の逃避行。音楽も素晴らしかった。


簡単には感想が言葉の形をとることができず、今に至る。
まるで総合小説のような、多くのものが込められている映画。
この映画は、いつか誰かと語り合いたいと思う。ひとりでは上手く片付かない。

ただ、とても価値のある体験だったことは確かで、映画館で観ることができて本当に良かった。もう一度、観るつもりだ。
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