まいみん

ザ・トライブのまいみんのレビュー・感想・評価

ザ・トライブ(2014年製作の映画)
3.9
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この映画の言語は手話である。
字幕も吹き替えも存在しない。
「愛」と「憎しみ」ゆえに、
あなたは言葉を必要としない。
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全編手話でキャスト全員がろうあ者のウクライナ映画。衝撃的すぎる。

おすすめできない。むしろ下手に見ない方がいいよ、と言いたい。でもこれを観るっていう経験はしといて損はないと思います。

まず内容より、ろうあ者の団体さんが観に来ていたこと。映画館では見たことない光景で、あーこれから観る映画は普通じゃないんだな、と改めて感じてすごく緊張した。

この映画はネタバレしたところで感想とか見ごたえにはまったく影響ない、というか台詞も説明もないので、ストーリーが合っているかわからないので、こと細かく書きます。本当に衝撃的だから注意。

主人公が入学したろうあ者の寮制の学校は、信じられない所で、、
もう荒れてるどころじゃない。暴力、強盗、売春が当たり前。教員が売春の元締めやっているような、救いようのない場所。

そこで主人公はいきなり目をつけられ、新参者としての洗礼を受けるんだけど、徐々に中心グループの一員になって売春の手引き役をやるようになる。

でもイタリア行きのために売春をしているボスの愛人に惚れちゃって、売春を辞めさせようとするの。そしてそのせいで不良グループから外される。

それでも辞めさせたいから、代わりに主人公はどんどん暴走して、盗みや人を襲ってまでお金を手に入れ、それをその子に渡してセックスするようになる。拒まれまくっても、関係なく。
もろなセックスシーンが何度もあるんだけど、お金渡してるってのが本当に切なくなる程、その子への愛情が伝わってくるのね。言葉じゃなくて、手つきや仕草や息遣いで、、

最後その子はイタリアに行くためにちょー怪しげなパスポートを手に入れたんだけど、それを主人公はボロボロに噛みちぎる。そんな怪しい事するな、という意味なのか、、それとも単に離れるのが嫌だったのか、、で、その場で不良グループに半殺しにされるんだけど、仕返しに夜そいつらが寝てる間にキャビネットで顔をぶっ潰して殺してしまう。

以上。ものすごいっしょ?笑

カメラワークのせいなのか、ものすごく客観的な時と、ものすごく感情移入している時と、両極端な目線が入り交じりながら観ていた気がする。
1カットが異様に長い。

主人公含め中心グループが強盗しに行くために、宿舎の階段をずーっと駆け足で降りていくシーンはカメラが最後尾でずっと追っかけている。
登場人物ではもちろん新参者の主人公が最後尾。これから悪い事しに行くんだ、、という緊張感がはんぱじゃない。

そしてなによりこの映画、台詞がないから際立つのか「音」がすごく響く。音の全てに意味を感じる。

強盗シーンのガラスを叩きわる音、トラックの運転手に売春を呼び掛ける音、手話がヒートアップした時の手の動作の音。堕胎シーンの器具の音。ラストのキャビネットで頭ぶっ潰す音。

あーーーーもう、本当に。堕胎シーンは見ていられなかった。
闇医者みたいな所で堕胎するんだけど、、もう、その子の声にならない悲鳴にもならない何とも言えない悲痛なうめき声。
しゃべりもせず表情をまったく変えず淡々とやるおばさん。
目をつぶっても意味がなかった。音の存在感がすごすぎて。ホラー映画でも目つぶらない私が初めて目をそらした。

そしてラストの超残虐な暴力シーン。
キャビネットを何度も思いっきり頭に降り下ろしてるから、ものすごい音がなる。1部屋に2人ずついて、全部で4人殺しちゃうんだけど、全員静かに動きもせずただ殺されていく。

途中でハッと気付いて恐ろしくなったんだけど、普通、隣でものすごい音がなったら起きるよね。別の部屋にいても、下手したら別の階にいても気付くよね。

でも彼らは「気付けない」。
そう、音が聞こえないから。

あんなに堂々とものすごい音をたてながら人間の頭をキャビネットでぶっ潰しているのに、その建物にいる誰しもが気付けない。

エンドロールも、4人をぶち殺した主人公が階段を下りていく音のみ。最後はバタンと扉を閉める音で終わり。

あの長い階段の存在感すごかったな。
初めは売春しに行く彼女たちが降りて行ったけど、施錠されていたのか自分はそこに入る事は出来なかった。

でも仲間入りして、その階段を降りて皆で強盗しに行くようになり

売春しに行く女の子を自ら先導してその階段を降りて行くようになり

最後はそのグループを殺して、階段を降りていく。

書きたいことがまとまらない。全部が印象的過ぎて。

イタリアに斡旋する人?から、くそださいイタリア土産のTシャツを貰って大喜びする女の子たち。とても純粋な少女に見えた。
かと思ったら次のシーンではトラックの運転手相手に体を売りに行く。

あぁ、、映画を観たというよりは、今までにない体験をしたという感じ。

キャストのほとんどが演技経験がなく、主人 公は本物のストリートギャングで、ウクライナではろうあ者の社会的地位が最低で、、とか。ちょっとこれから色々資料見て今ある膨大な疑問を少しずつ解決していこうと思います。

ヘトヘトだわ(笑)