眠人

永遠に君を愛すの眠人のレビュー・感想・評価

永遠に君を愛す(2009年製作の映画)
-
濱口竜介監督の商業デビュー前の作品。東京の郊外で同棲する男女のカップルの結婚式当日を描いた作品。

タイトルから想像した通り、一筋縄ではいかない複雑な人間関係の中で煩悶する人間が生き生きと描かれていた。秘密は他者との濃密な関係性の中でこそ生じ、時には他者への想像力を、時には罪悪感をもたらす。そんな秘密が全くない状態ってどんな心地なのだろうか。どこか物足りないかもしれない。少しぐらい秘密を抱えていた方がいいんじゃないだろうか。

西武鉄道、多摩モノレール、ハイエース、濱口作品らしく今作にも乗り物が数多く登場する。後年の監督インタビューで「会話劇の中でモーションピクチャーとしての魅力を引き出すために、苦肉の策として乗り物のカットを撮っている」と監督自身が語っている通り、乗り物を映した動的なカットは音楽で言う転調のような役割を担っており、物語の流れに心地良い起伏をもたらしていた。特に多摩モノレールの車窓のカットが気に入った。何の変哲もない郊外の家電量販店や大駐車場さえもが瑞々しく感じられるのだから映画というのは不思議だ。

結婚式の余興に出演するバンドの練習風景も描かれており、濱口作品にたびたび出演している岡本英之さんが今回も登場していた。岡本さんの歌声は美しく、儚く、心の奥底まで染み込んでくる。劇中のバンドの楽曲を収録したサントラを発売して欲しいぐらい。
眠人

眠人