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はじまりへの旅のOのレビュー・感想・評価

はじまりへの旅(2016年製作の映画)
3.7

この映画は人物の眼に
よく感情が表れていると思います。
特に服装も言動も何もかもが
"普通"ではない家族に寄せられる視線、
目は口ほどに物を言うという言葉も
あるように、その眼に家族への軽蔑と
嘲り、好奇心が隠されもせず映って
いることに複雑な心境になりました。
それは国、宗教、人種、性など
人と違うものは悪いものであると
される世の常そのものですね。

この映画のタイトルである
"はじまりへの旅"は、
家族としての再出発であり、
個人の1人の人間としてのはじまり
であるように感じました。
山に籠っているだけでは
知り得なかったことを肌で感じ、
そして学び吸収していった子どもたちは
いつの間にか父親をも支えていく
ことの出来る人間へと成長し、
対等な家族へと生まれ変わったの
だと思います。
そして自らの意思で未来を選択し、
進んでいく為の"はじまり"が
母親が与えてくれたこの"旅"
だったのではないでしょうか。
親は子どもに何を与えて
あげられるのだろうか?
この映画の父親にとっては
1人で生きていくことの出来る力
だったのでしょう。
でも、やっぱり最後に残るのは
親から子への愛、そして
子から親への愛(家族愛)なんだと
思いました。

印象に残ったシーンとしては、
やはり子どもたちを祖父に預けて
1人バスに乗り泣く父親のシーン。
バックミラーを覗けばいつも
子どもたちの姿を確認することが
出来たそれにはもう、子どもたちの
姿は映っていない...大きなバスに
たった1人という対比も孤独感と
父親の後悔を助長しているようでした。
映画を観る際には是非、
子どもたちがいる時のバックミラーと
いなくなった時のバックミラーとで
注目してみるといいかもしれません。


この映画には
"人民に力を!権力にNOを"など
印象的な台詞と多かったのでそんな
ところも是非楽しんでみて下さい。

また、人間ドラマだけでなく、呼吸、
鼓動、風、雨、食事など色彩と音、自然
までもが五感を楽しませてくれる映画でした。
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