よっひ

はじまりへの旅のよっひのレビュー・感想・評価

はじまりへの旅(2016年製作の映画)
3.9
考え方や生き方が自分とは違う存在、自分が思う"普通"の枠組みから外れている存在に、私たちはどこか不安を覚え同化させようとする。
人間も生物の一種である以上、仕方のないことなのかもしれない。

主人公ベンの考え、そして義父をはじめとする親戚の考え。どちらが"正しい"とか"普通"とかいうものではなく云々、と解釈した。

そもそも普通という基準を設けてしまった時点で思考は停止しているのではないか。
"常識"や"一般的"というのは個人の尺度によるものでしかなく、物事は常に多面的で複雑であり、且つそのいくつかある多面性に優劣はないのだと思う。

ラスト、家族は新たな世界に飛び込んでいくが、それは迎合ではなくて価値観のアップデートである、すなわちこれまでの生活で形成された軸のようなものは彼らの中にあり続ける前提で、そこに肉付けされていくイメージ。そうであって欲しい。

SNS上の世界を含め、世の中が殺伐としている昨今、いわゆる"多数派"と呼ばれるコミュニティが果たして本当に「正しい」と言って良いのか、一度立ち止まって俯瞰的に見つめることを常に意識していたい、そう思えた映画だった。

クライマックスの青空×湖×草花×合唱のシーンは幻想的で美しかった。
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