若年性アルツハイマー病と戦うアリスと、それを支える家族のお話。
記憶を無くし我を失っていくアリスを前に、とても献身的で仲の良い家族が目に見えない速度で少しずつ変わっていく。
例えば、既に家族との会話に入れないアリスを目の前にして、アリスの話をするシーン。
もちろん家族の誰もがアリスの事を考えて話しているのだけど、「ママがいないように話さないで」と次女は抵抗する。
「うまく家族の関係が回るように」
「恥をかかないように。」
それはよくある事だと思っていて、家族という小さな社会の中で、ある部分では必要な事だと思う。
しかし「どんな姿になっても人として尊重する」それがどれだけ大切で難しいことか。ありのままの次女の姿に感銘を受けた。
同じアルツハイマー型認知症だった祖父は、久し振りに会った時には既に言葉は失っていて
私に付けてくれた名前も呼び掛けてはくれなかった。
病室から見える百日紅が綺麗だね なんて誤魔化して、顔色が良くて安心した なんて大人振りながら。帰ってひっそり泣いた。
祖父の葬儀の日。
明るくて冗談好きだった祖父の死に誰もが涙し、たくさんの思い出を共有し合っては笑っていた。本当にみんな笑っていた。
祖父が失ってしまった記憶は周りのみんなが持っている。記憶を失っていく怖さを知ったけれど、その場にいるとそれさえも補えるんじゃないかな なんて思った。
大切な記憶を、愛した人達の事を、できるだけずっとずっと忘れないでいようと思う。