ナカヤマヒロ

アリスのままでのナカヤマヒロのレビュー・感想・評価

アリスのままで(2014年製作の映画)
5.0
《自分ごととして捉えた時に生起する感情はいかに》
50歳で若年性アルツハイマーを発症したアリスの哀傷と家族の苦悩、そしてそれを抱えて生きていく人達への尊厳を描いた作品。

監督のリチャード・グラッツァーは撮影をスタートさせる直前に筋萎縮性側索硬化症(ALS)と診断されていたとのこと。ALSは身体を思いどおりに動かすことができなくなる難病であり、日々刻々と『今の自分』を失っていくという意味ではアリスと同じだ。そして、アカデミー受賞式、約3週間後に亡くなったそうだ。


昨日まで出来なかったことが出来るようになった時の喜びよりも、出来なくなっていくショックの方がより大きいだろう。

日々押し寄せる恐怖に一つひとつ向き合い、その都度死闘を繰り広げ「生」を勝ち取ることの辛さは言葉にし難く、あまりに残酷だ。

そんな中においても、リチャード・グラッツァーはこの作品を作ることを望み、世に送り出す決断をした。
本作はまさに彼の魂そのものだ。

1人の勇気溢れる人間の生き様を見逃すべきではない。