丹叉

ボーダーラインの丹叉のレビュー・感想・評価

ボーダーライン(2015年製作の映画)
4.2
何度目の鑑賞だろう。この一貫したシリアスで殺伐とした雰囲気、現行ハリウッド撮影監督の中で最も素晴らしい画が撮れる人物であろうロジャーディーキンスによる我々を画面に釘付けにしてしまう撮影、そしてヨハンヨハンソンによる文句の付けようがない弦楽器打楽器による圧倒的表現力の低音音楽、一度味わったらもう離れられない。癖になって仕方がない。

特に撮影が半端なさすぎる。この規模感の映画でここまでのクオリティでくるとは。当然専門的な知識は持ち合わせていないのだが、その圧倒的な技術力を容易に察することが出来る。カットの絶妙な長さ。俯瞰視点。風景美。また他の撮影監督は撮らない様な、一見省いても変わらなそうなショットを効果的に挟んでくる。その細かさがあることにより我々は映像にフィクション臭さを感じずに没入することが出来る。

重要では無い場面含め全体通してその撮影センスを感じられるが特に気にいってるのは終盤のトンネル突撃直前シーン。あのトンネルに突撃する直前の、ほぼ日が落ちかけたダークな空を背後に被写体が影になりシルエットしか認識できない状態で銃を構え歩むシーン。あれはもう美しすぐてぽかーんってなっちゃった。当事者達の暗視ゴーグル視点を我々にも体験させるシーン。あれどうやって撮ったんだよ。あそこは一歩間違えればFPSゲーム臭くなりそうだが、そこはさすがディーキンス、しっかり映画的な映像だった。ラストの”SICARIO‘‘シーンも完璧だね。
丹叉

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