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ボーダーラインのnotitleのレビュー・感想・評価

ボーダーライン(2015年製作の映画)
4.5
ドゥニ兄貴×ディーキンス爺=絶頂!
エミリー・ブラントの姐御が麻薬カルテルと対決する映画がつまらないはずがない!

まず、音の使い方がひじょーに良い!
映画がスタートした時点からバックで(…ボボン…ボボン…!)とずーっと音が響いていて、「これから何か起こるぞ!」っていう緊張感が高まっていく。
そこからFBIの突入、銃撃と進んでいくわけですけど、そこでもまた音が鳴り始めて、現場はクリア(確保)したはずなのに、また不穏な空気が流れ始めて…。
とにかく、音響の演出って凄い!

そして、いつもながらディーキンス爺のカメラが冴え渡る。ビックリするくらいカッコいい全景、じっくりと撮られた被写体とその臨場感。どこ切り取っても被写体がしっかりキマっていて、すごく詩的に見える。凄い。

で、肝心のお話だが、これが全然説明しないのね! ブラントの姐御と観客は序盤のあたりで一気に置いてけぼりを食らってしまう。
必死について行こうとするブラント姐が頑張ってるのを見るにつけ、ジョシュ・ブローリンの分かってるくせに勿体つけたヌケヌケ感が超イライラするのだ(褒めてます)。
というか、『悪の法則』でも思ったけど、メキシコ麻薬戦争に関わってる人ってホントに人に説明しないよな!

そこへ颯爽と登場するベニシオ・デル・トロ。キャラ的に超安定感があるのに、その後ろに狂気が見え隠れ…。おっと、ウォーターサーバーを持った! じゃあこのあたりで映画の見せ場ともなる、圧倒的にトンでもなく恐ろしい拷問シーンが……

無いんかい!

ここで登場人物だけじゃなく観客も締め出されちゃって、もれなくブラント姐と一緒の疎外感が味わえます。

しかし、この映画、全体的にそうなんですね。それがメキシコ麻薬戦争。
「こっちの金があっち行って、元々こいつがどこそこのボスで、こういう手続きしてもこうなるから、ここの金がこいつに行けばここで殺されて、ここを潰すにはこうやって陽動して…」って、両者入り乱れてグチャグチャしていて、もう何がどうなっているのか分からない。もはやどっちが正義とか悪とかそういうレベルの戦いじゃないわけなのさ。

「テメェはコマなんだよ! 戦争は勝ちゃあいいんだよ! 説明? 法律ぅ? 知らねーよそんなもん、嫌なら辞めろやボケ殺すぞ」

そりゃあ、流石のブラント姐さんも泣いちゃいますって。
でも、それがメキシコないしはアメリカの現実なのだよね。
見事な語り口で流石だぜ、ドゥニキ。
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