良き映画であった。
なんとなくだが、ツイッター的な映画である。
何がツイッター的かと言うと、
一つ。
主人公のバーナムが自身のフリーク・サーカスを立ち上げ、次第に有名になる過程が、ツイッターで〝バズる〟風味に味付けされている点だ。
彼は、いわゆる炎上商法的に話題性を狙う。
良くも悪くも〝引っ掛かり〟を武器に世を渡って支持を集めるが、一方で着実に敵をも増やしていく。
そして、増長した結果、彼は全てを失ってしまう。
その一連の流れは、まるで今日のツイッター芸人か、ユーチューバーを観ているよう。
果たして、最初は金のために活動を始めたバーナムは、家族や仲間の想いに触れ、ついに自身の芸術を確立する。
これは、そういった物語だ。
さて、もう1つの理由は、画的な刺激、物語的な盛り上がりが、怒濤のごとく叩き込まれるところ。
さながらSNS上で披露される漫画やコメント合戦のように、見所の次には次の見所が提供される。
観客はキャストの生き生きとした演技や映像のきらびやかさ、物語のスピード感に、まるで飽きる暇が無い。
非常に上手く構成された映画で、確かに面白い作品である。
マイノリティに対する昨今の世相を反映したテーマもグッド。
歌も素晴らしく、ウルっとくる瞬間は一度や二度ではない。
しかし、やはりラ・ラ・ランドの再来とはならなかった。
軽妙なテンポは、ともすれば性急すぎ、人間ドラマを薄めている。
登場する敵の多くは一面的な連中ばかりで、話の転換もリアクションの積み上げというよりはイベントの連続だ。
それだけに映画のシンプルな王道さは際立ち、多くの人に受け入れられるだろう。
しかしながらラ・ラ・ランドが表現した現実感とミュージカル的ファンタジーの絶妙なバランスや、レ・ミゼラブルのような物語的な熱量は窺い得ない。
あるいはツイッター的(つまり現代的)な語り口が、実験的だとして映画史に刻まれることはあるかもしれない。
だが映画としては、平凡の域を出ない。
個人的には、期待はずれだった。