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グレイテスト・ショーマンのおーつのレビュー・感想・評価

グレイテスト・ショーマン(2017年製作の映画)
2.7
【あれでグレイテストなショーマンとか言われたら本当にペテン師じゃん】
注意)今作はとても評判が良いが私は全否定派という少数派なので、本レビューは大絶賛の方の気を悪くするかもしれません。

この映画には「それはダメだろ、」と感じる点が多すぎる!というわけで本レビューではそこを中心にして述べます。あと映画自体を全否定というわけではなく、劇中の音楽9曲は好きだし映画自体も良いところもあることはありました。
1.良かったところ
まず冒頭のタイトルシークエンスは良かった。物語の舞台が19世紀半ばなので、タイトルやキャストの文字を1920年代風に演出して見せる。でも流れているテーマソングや繰り広げられるサーカスは現代的。このオープニングから“時代設定に合わせず劇場に見に来た観客を楽しむものをセレクトする”という実在の人物バーナムの精神をみせていると感じました。そしてミュージカルで主人公を少年から大人になるまでをスムーズに描いたことは素晴らしかったです。

2.悪かったところ
【話が散らかったままだぞ!】
この映画、テーマに掲げる要素が多すぎる。
具体的にあげていくと、
2-1マイノリティの問題
2-2興行師の駆け引き(特にザックエフロンのところ)
2-3もう一人の女性と…
2-4妻、娘たちとの和解
2-5義父との確執
2-6エイジオブイノセンスばりのNY社交界
2-7身分違いの禁断の恋愛
さらに
2-8そもそも娯楽作品は芸術というに値するのか?
という、“娯楽そのもの”の意義についても語ろうとしているんです!
しかもこれだけの要素を105分に収めようとしているんですよ。
多すぎませんか?笑

105分ですべて解決できたなら、この映画は間違いなく傑作ですが、ほとんど解決できていないのです。

最終的に大迫力のミュージカルの大円団で締めくくられるので観客は「腑に落ちた」気になってしまうんですよ。でも劇場を後にして電車の中で思い返すと「この映画の主軸はなに?結局なんも解決してなくね?」ということに気づいたのです。

一つずつあげていきましょう。

2-1.マイノリティの問題
彼らが自分の居場所を見出し『This is me.』を歌うところは泣きました。でも“ユニーク”とか旨い事をいって彼らを商品、客寄せの見世物のように扱ってしまった主人公の心はどのように変化したのかわからない。たしかに差別意識は街の人々より低いのはわかります。でもオペラ歌手までも見捨てて家に帰ったからといって、サーカスの彼らとの距離は縮まっていませんよね?
主人公はサーカスのメンバーではなく、あくまで家族のもとへ帰っただけです。別に火事が起こらなきゃこれまでの距離感のままですよ。
そしてもっと酷いのが、
火事が起きた+いろいろあった=お金がない→「みんなサーカスやろうぜ!」
いやいやいや、なめんなよ!
ヒュージャクが遠征している間もずっとザックが率いて頑張っていたんだよ。(途中からザックは独立したほうが良いと感じてしまった。)結局は利益追求型の人間のままじゃん。楽曲以外でアカデミー賞とかにノミネートされない理由はこのようなマイノリティの方の描き方が雑だからだと思います。

2-2.興行師としての駆け引き
タイトルにもある通り主人公の職業はパフォーマーではなくショーマン(興行師)なので商談の場面が重要となっています。ザックを雇えば上流階級の客層にうけるという算段は間違っていません、ひどいと思ったのが交渉シーン。ここは彼の興行師としての腕の見せ所なのに、まさかの歌いだした
「!?」
そしたらザックも歌いだした
「!?」
歌い終わったら交渉成立していた。
「!?!?!?」
何が起きたんだ!?
タイトルにもある通り興行師の話なんだし、最初のようにミュージカルを効果的に使うのはわかるけど“ごまかすために”使うのは納得できない。
ザックエフロンは最終的に「お前がやりたいことはそれなの?」という結末でしたね。
こういうところも散らかったままになっている。

2-3.もう一人の女性と…
はっきりいってレベッカファーガソンの事ですが、なんですかあの中途半端な話は。
彼女の登場が登場したことで、前述したとおりサーカスのみんなと距離が開きました。それだけなんですよ。笑
映画としてそれ以外の役目がない。
たしかに新聞にすっぱ抜かれてスキャンダルになったりするけど、その話は割とすぐに流されちゃう。笑
この映画は“右から左に受け流す”ことが多い。。。

そして彼女が降りたことでヒュージャクに家計的に代打的をするんですけど、
「あの女ぁぁ!」って思ったら和解もせず終わりなんですよ。
え、放置?
まあそれで彼女と違って自分についてくる事しかできないサーカスを選ぶんですから、主人公は酷いやつですよ。。

2-4.妻、娘たちとの和解
まあこれは最後に一応したことになっているけど、心が変わってしまった主人公に愛想尽かして出て行ったわけです。
「心は変わってないけど、これからはザックに任せて家にいる時間増やすわ!」
これじゃあ解決してないじゃん!
もう本当にザックかわいそう、、。

2-5.義父との確執
これは映画冒頭の少年時代ころからあるもので、劇中で定期的に描かれていたのですが解決されませんでした。
妻を取り戻すために実家にいった時に義父に「妻はどこですか?」と尋ねたら「いません。」と突き返されてしまいます。そしたら娘たちが「海のほうだよ~」と後ろから教えてくれたのです。そのときのヒュージャクの“ははーん、そこでしたか”みたいな顔を浮かべて妻の元へすっ飛んでいくのです。
義父の存在を無視したままじゃん!
あれだけ確執を描いておいて和解どころか、距離が1ミリも縮まっていない。
ひどいよ。。
こんな人と結婚するとかそりゃお義父さんも心配するのも当然です。

2-6.NY社交界 2-7.禁断の恋愛
この2つは他の要素に比べると消化不良がない程度に描くことができていると思いました。

このようにですね、105分の尺に全く収まることができない膨大なテーマが宙ぶらりんのままなんですよ。
そして語りたいことが多すぎて、この映画の主軸がなんなのかつかめない。
一応ラストに主人公バーナムの実際の名言みたいのが出されて、

2-8.娯楽も芸術といえます!
みたいな所に無理やり主軸をぶっさすんですよ。
「あ、そういうお話だったの?」という感じ。
でも言葉自体はめちゃめちゃ良い言葉なので心に残りましたけどね。


というわけで、
解決していない話が多すぎて散らかったままで、マイノリティの方々に失礼な感じにもなているわけです。
音楽が良かっただけに残念!!

そして賛成派が多い中、私と同じ意見の方がいれば
「お口直しに『バーフバリ』でもみてミュージカルでお口直ししようぜ!」と言いたいです。
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