82saku

グレイテスト・ショーマンの82sakuのネタバレレビュー・内容・結末

グレイテスト・ショーマン(2017年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

「本物を聴かせたい」

それは、
自分では如何ともし難い出自で虐げられてきたと感じていた彼女の、
自らの努力で作り上げた拠り所、
「歌」
を肯定してくれる、
最高の口説き文句だったに違いない。
彼女は震える程嬉しかったろう。

彼に家庭がある事は分かっていた。
だけど、
共感できる境遇の彼が、
自分の最も大切な「歌」を理解し、
活かしてくれ、
新しい世界を一緒に見てくれている。

彼女は恋に落ち、
そして、
彼もまたそうだと思っていた。

それだけに、
落胆も激しかったろう。

おれは、
彼の、
あまりにも身勝手な生き方が、
本当に、本当に気に入らない。

小人症の彼を誘った時、
巨人症、
多毛症など、
彼、彼女らを誘って、
金儲けの見世物にして。
確かに、
居場所を用意した。
それは賞賛される事だと思う。
でも、
彼、彼女らのケアについては、
作中で一切触れられていない。
どうやって信頼関係を築いたんだろう。
街の差別主義者達から、
どうやって守ろうとしたんだろう。

金儲けの道具として彼、彼女らを利用するだけ利用して、
上流階級に加われるチャンスが訪れた途端に、距離を取る。
反吐が出る。
本当に、反吐が出る。

そんな主人公の態度を受け止めた彼、彼女らは、
「This is me」と、
大地を踏みしめながら、
自分たちの劇場に戻り、
できることを全力でやって、
拍手を得る。
そうだ。
そうだそうだ!
頑張れ!!!!


頑張る彼、彼女らを放って、
そして、
支えてくれた妻と子供達を置いて、
新しい金蔓と興行に出る。
歌の興行が保身(急に我にかえる)で失敗して無一文になったら、
距離を取った人々の元に戻り、
可哀想な自分の姿を晒す。
反吐が出る。
本当に、反吐が出る。

この男のせいで、
素晴らしい歌やダンスが、
上手く入ってこない。
この男に腹が立って、
上手く映画の世界に入り込めない。
悔しい。

描かれていないだけかも知れない。
主人公と彼を取り巻く大勢の人々との心の触れ合いが、
少しでも良い、
描かれていたら良かったのに。
主人公から、
人間としての魅力を感じられなかった。
優しさがあっただろうか。
その眼差しは、
いつも、
何に向けられていただろう。

エンドロールに名言があったけど、
至極真っ当な事を言っていたけど、
この主人公が発したのだと思った瞬間に、
「聞きたくない」に変わる。

ショーの出演者達を誘う時に、
「今まで辛かっただろう。
これからは僕が全力で守る。
一緒に頑張ろう。」
そんな言葉が聞けたら、
姿勢が見えていたなら、
映画の最後の名言が光を放ったろうに。

この映画で、
主人公から、
そんな態度が感じ取られたか。


いくら素敵な歌を聴いても
どんなに素晴らしいダンスを見ても
満足できない
全然足りない
私には
足りない
もっと、
もっと、
優しい世界をスクリーンで観たい。
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