かげ

ネオン・デーモンのかげのネタバレレビュー・内容・結末

ネオン・デーモン(2016年製作の映画)
4.4

このレビューはネタバレを含みます

「ドライヴ」、「オンリー・ゴッド」のニコラス・ヴィンディング・レフン監督の最新作。「美とは一体何か?」その本質に、物語、キャラクターを通して迫っていく。

場面を象徴する鮮烈な色と光、ストーリーに没入するためのエレクトロニカ寄りのBGM、長回し、スローモーションの多用といったレフン節は全開。そしてやっぱりエログロあります。

美術館行ったとき「この絵は何を意味するのだろう、どういう由縁があるのだろう?」と考えたり解説読んじゃったりする人におすすめ。というか私がそうだから。

ここからネタバレあり
 評判をみるとエル・ファニングの演じる主人公ジェシーが美しいという点に納得がいかない人が多いみたいですが、確かに日本人からみた欧米人の顔立ちが整った美しさみたいなものはあまりない。私も特別美しいとは思わない。ルビーの方が断然好みですし。
 しかし、ジェシーのみが持ち得ているものがある。それは「穢れのなさ」。
 彼女の処女性や純粋さはストーリーでも語られているし、若さとその白い肌はそれに更なる価値をつけている。ニンフといった形容がしっくりくる感じだろうか。
 エル・ファニングは「マレフィセント」を見たときの印象が強烈だった。彼女の演じるオーロラ姫は純真無垢の具現みたいなキャラだった。先入観なく妖精やマレフィセントを受け入れ無邪気にふるまう姿は、それはとても可愛らしいのだけど、同時に頭のネジが外れたキ〇ガイの様にも感じた。彼女には普通の人の持つ恐れや不安がないキャラだった。(映画全体は楽しめなかったけどそこはかなり面白かった。)
 そういった「穢れのなさ」は、ネオン・デーモンにおいて美を享受、表現する者たちを魅了し、美を求める者たちに憧れ、嫉妬される。

 本編にもどると最終的にジェシーを文字通り食った3者はそれぞれにジェシー肉塊を快楽や嗜好品として感じるもの、自然の美しさとして拒絶するもの、美しさを取り込むものを分けて描かれる。これは程度は違えど、絵画を楽しんだり、周りのチヤホヤされる子に嫉妬したり、綺麗になるために何がいいかもわからない健康食品を食べたりするように、まぎれもなく美に対する私たちの正直な姿だ。だからこそ腑に落ちるし、ストーリーが突拍子もないものとは思わない。

 個人的な感想は直感的にしろ論理的にしろ納得するところが多いし、映像体験として強烈なものを感じさせてくれるので、オンリー・ゴッド同様この作品も大好きだ。
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