【筋の骨格は悪くないけど】
老いた婦人が、過去の思い出を確認するために軽井沢の美術館を訪れますが、その軽井沢で様々な人と邂逅し、そこから自分の過去と関わりをもつ人物との再会を果たす、という物語です。
筋書きそのものは悪くなく、主演の八千草薫さんも、老いてなお気品と魅力があり、さすがと言いたくなります。最後近くで出てくる老画家役の仲代達矢氏も味があります。
というわけで、本来なら80点くらいを付けたいのですが、惜しいことに骨格はいいのに細部がイマイチなので、減点せざるを得ないのです。
まず、登場人物に善人が多すぎること。ヒロインが出会う人は皆親切で、ヒロインのために色々尽力してくれます。こういう人物が出てくること自体は構わないのですが、出てくる人が全部そうだということになると、「都合が良すぎるんじゃないの」と突っ込みたくなる。別に悪人を出せというんじゃありませんよ。過去との関わりを自分の納得のいく形で終わらせたいヒロインが、周囲の人々の親切さにあまりにおんぶしすぎていて、逆にこの映画の説得性を低くしていると言いたいのです。
あと、登場人物の言葉遣いですね。ヒロインはもう傘寿を迎えているでしょうから、言葉遣いは少なくとも昭和三十年代までのものにしてほしい。着物姿の凜とした老婦人が、変に現代的な言葉遣いをするのは興ざめです。脚本が悪いと言うしかないですね。