ローズバッド

悩ましき男たちの肖像のローズバッドのネタバレレビュー・内容・結末

悩ましき男たちの肖像(2009年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

身につまされる…セックスコメディの秀作

ハンガリー映画、74分。
邦題『悩ましき男たちの肖像』のとおり、悩ましく情けない男たちの、セックスにまつわる小咄。
相当な低予算だと思うが、かなり笑えるセックスコメディ。
撮影のクオリティは極めて低い。
“ドキュメンタリー風”を狙ったのか、手持ちカメラが不必要にグワングワン揺れる。
もしかすると、照明は使っていないのではないか。
マンションなどのロケ現場の光で、そのまま撮っていそう。
主に、顔のクロースアップ切り返しの会話で繋がれる。
たぶん無名の役者たちは、なかなか良い表情を見せている。
劇伴音楽は、ほぼ無いが、ストリップクラブシーンなどには、現場音楽が流れている。
映画全体のクオリティは、褒められたレベルではないが、とにかく脚本がめっちゃ面白いのと、男の欲望の馬鹿馬鹿しさを、演出や編集で巧く描いている。


尻のはみ出た超ミニスカートをクロースアップで追い続けるタイトルバック。
懲りない男たちの欲望の視線を象徴する、滑稽で秀逸なオープニング。
その後、4人の男たちの置かれた状況、体内でムンムンと沸き立っている性欲の有り様が、ランダムに紹介される。
そして突然、ストリップクラブで踊るダンサーのおっぱいや尻の映像、そのクラブに男たちが居合わせる事になった顛末が順に語られる。

(1)アコシュとマリ
中年男アコシュが、チャットで知り合った若い女とデートにこぎ着ける。
上着を脱ぐとタンクトップの巨乳に目を奪われる。
ドライブに誘うと「あの雲、チンコみたい」なんて、女から下ネタ連発。
これは絶対イケる雰囲気…と思って巨乳に手を伸ばすと、女は怒り狂って顔に護身用スプレーを吹きかける。
チャットでも下着や性感帯の話題で、あんなに盛り上がってきたのに、どうゆう事だ!と怒り心頭、帰宅する。
妻マリに結婚指輪をはずしているのや、手の傷を見つかり、「鳩に引っ掻かれた」と苦しすぎる言い訳。
全てを知っていたマリは、「乳房を切除してから触れてもくれない」と嘆き、「セックスか離婚か、寝室で待っているわ…」と迫る。
寝室に行き、添い寝するが「できない…」と漏らすアコシュ。
マリは「シリコンを入れるわ…私が必要なら迎えに来て」と家を出て行く。

(2)トミーとカティ
ポルノサイトを見てオナニーしようとしているトミー、過保護な母親から何度も電話が掛かってくる。
ビキニ姿でウロウロしている、隣室に越してきたカティが、話しかけてきてイイ雰囲気。
カティの部屋を訪ね、押し倒そうとすると、鼻に噛みつかれ、トミーは号泣。
カティは、自暴自棄のトミーの話を聞いてくれる。
「27歳にもなって童貞…、男らしい俳優になりたかったのに、奇病なんだ…」「命にかかわる?」「ああ」「どこが悪いの?」「チンコが小さい…」
ふたりで家呑みすると、酔ったカティがエロ豹変、ズボンを下ろされそうになると、トミーは拒んでしまう。
あらためて部屋を訪ねると、カティは、いかついDV元カレとヤッてる。
何も言えず、立ち去るトミー。

(3)ガボールとエバ
結婚式を明日に控えたふたり。
強面のガボールは、試着にウンザリ、やたらとビデオを回すエバのゲイの友人にもムカついている。
ただ、ベッドでふたりきりになると、エバに甘える幸せなガボール。
しかし、「男だったの…性転換手術をしたの…」と告白され、愕然とし、ゲロを吐く。
半狂乱になり、なぜかワンピースを着たりして、部屋中を破壊。

(4)バラージュとハイニ
「親友に妻を寝取られたら…?」と尋ねるバラージュ。
「制裁だ…男なら当然だ」バーテンは答える。
自宅に忍び込むと、妻ハイニと同僚がベッドでワインを呑みながら、メイド服と手錠のプレゼントを開けている。
拳銃を突きつけながら踏み込むバラージュ。
「あなたを愛しているけど、必要なことだったの…彼と初めてイッたの…」と『女性のオーガズム』という本を取り出すハイニ。
「俺とは感じなかった…?、11年も演技してたのか…」
「彼は私を気遣ってくれて、ワインで気持ちを落ち着かせてくれた…」
「ヤッてみせてみろ…」
絶望のあまり拳銃をくわえ引き金を引くバラージュ。
しかし、カチッと音がして不発。

再びストリップクラブ、それぞれに暗澹たる顔で女の裸を見ている男たち。
各々がパートナーとの復縁に踏み出す姿を苦々しく描いてエンドロール。


男の性欲のやるせなさ、男らしさへの固執、女性に対する身勝手な妄想、理解の浅さ…。
まさに『悩ましき男たちの肖像』をセックスコメディとして、短い時間のなかで巧く描いていて、面白いが、身につまされる…。
日本人俳優でリメイクして、深夜TVドラマにしたら、けっこう話題になりそうな気がする。
4人の男たちに少し関わりを持たせるなど、ラストに多少のアレンジをすれば、なお良いかもしれない。