イワシ

ラスティ・メン/死のロデオのイワシのレビュー・感想・評価

5.0
競技がおわり、からっぽになった競技場から一人で出ていくロバート・ミッチャム。彼が十数年ぶりに生家にやってくる帰郷シーンがなんとも素晴らしい。ヴェンダース『ニックス・ムーヴィー/水上の稲妻』(1980)で、編集中の『ウィ・キャント・ゴー・ホーム・アゲイン』とともに画面の中に登場するこの映画は、ニコラス・レイの作ってきた映画がそうであるように(また、遺作のタイトルが示すように)、アメリカ人にとって、“home”とはいかなる意味をもつ言葉なのか、そもそも“home”とはいまだ未完成の概念なのではないか、という主題につらぬかれている。ロバート・ミッチャム、アーサー・ケネディ、スーザン・ヘイワード。主要な登場人物はみな、自分だけの“home”を求めてアメリカを転々とする。彼らが訪れた場所で行われているのは、カウボーイの技術を見世物にしたロデオ・ショーだ。この映画では、西部劇のパロディがおこなわれているのだ。脚本を担当したホレス・マッコイの傑作小説『彼らは廃馬を撃つ』は、大恐慌時代に生きる人生に選択肢のない人びとの生と死を、マラソンダンスという競技を通して描き出した小説だが、「人生の目的を尋ねたすべての世論調査の結果が、十人中九人のアメリカ人が『自分の家を持つこと』と答えた」という時代を背景にした『ラスティ・メン』の脚本は、西部劇のパロディを演ずる人びとが書かれている。そこには、『彼らは廃馬を撃つ』のマラソンダンスの円環性が、ロデオという競技に、アメリカ中の放浪に変奏されている。アメリカ人はフロンティアが消滅した現代でもなお、“home”を求めてさまよいつづけているのだ。ニコラス・レイはそのことを、ケネディよりも8年も早く、この映画のなかで提示している。

『ラスティ・メン』は、2015年12月現在、ブロードウェイから『不屈の男たち』というDVDタイトルで発売中。