Iri17

プリズン・エクスペリメントのIri17のレビュー・感想・評価

3.5
大学の授業で鑑賞。

囚人は番号を与えられ、同じ格好させられることで、個性や人間性を剥ぎ取られ、ほとんどの囚人が反抗心や思考力を奪われている。囚人の間に格差を与えることで、囚人同士の間を裂き一致団結して抵抗するのを防いでいる。
看守側は権力と教授からのお墨付きでどんどん動物的になっていくのはナチスやソビエト、日本帝国に酷似しているし、教授たちも看守たちと同じでまともな判断ができなくなっており、刑務所の外でも実験と同じ結果が表れており、大義というものがいかに人を狂わせるのか分かる。

同じ格好をさせ、テンプレートのセリフを言わせるような就活や、丸坊主にして、先輩や監督の言う事が絶対に許されないよう中高運動部も同じ支配構造ではないかと思う。この実験と同じ構造が僕たちの周りにも溢れていると思う。

この肩書きを与えるということの恐ろしさは『わたしは、ダニエル・ブレイク』などでも描かれていたが、ハンナ・アーレントが『全体主義の起源』で主張したように、階級社会から逸脱した、刑務所の囚人や労働できない過度な貧困層は、ヘイトが向けられやすいということが、この実験で証明されてしまっている。

不快度MAXの映画だが、人間の脆さや社会の恐ろしさを表している、今日本に住む我々が観るべき映画だと感じた。
Iri17

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