スキピオ

MERU/メルーのスキピオのレビュー・感想・評価

MERU/メルー(2014年製作の映画)
5.0
<なぜ登るのかとか考えちゃいけない>

熱い、激アツ、満点。ただでさえ高い標高に加えて、90度に近い岩面を登るため、荷物運びの地元部族ガイドを連れて行けず「エベレストよりも厳しい」と言われる未だ「人類未踏」のMERU峰に挑む男たちを描くドキュメンタリー。未だ人類未踏なんてあったんだね。

映像は、行程に行き詰まりを見せた感のある猛吹雪の岩面にぶら下がる極小テントでチームが身を寄せ合う所からはじまる。

登山チームの1人がカメラマン・ディレクションを務めるだけあって、派手さはなく、構成や説明、撮影に荒削りなところはある。それでも極限状態の登山チームメンバーのリアルな表情や言葉をありえないくらいに間近で垣間見ることができ、登山に親しみが無くともグイグイ引き込まれた。

"現実は小説よりも奇なり"で、いいドキュメンタリーというのは途中からドキュメンタリーであるというのを忘れて、まるでフィクションの「物語」を観ているかのようにエモーショナルにのめり込んでしまうことがあるが、この作品がまさにそうだ。ネタバレになるから言えないけど、最後まで観れば上述の素人普請であっても「超大手ユニバーサル映画によって世界配給」された所以がわかる。ちなみに日本は劇場公開見送り一歩手前も中小配給会社の努力により公開にこぎ着けたとのこと…。スクリーンで観られて感謝。

去年からたまたま「ヒマラヤ 地上8000mの絆」「Valley uprising 」と登山映画の良作を観てきて、わりとマジに大切なことは「なぜ危険な山にわざわざ登るのか?理解できない、とか考えちゃいけない」ということ。それを考えはじめたら我々一般人は「引くだけ」なんで。