享楽

ゴースト・イン・ザ・シェルの享楽のレビュー・感想・評価

4.6
「ブレードランナー」のサイバースペースを刷新し「エクス・マキナ」のアンドロイドの人間と機械の境界線を更に薄くしよりシームレスに映した、ハリウッズ・キャピタリズム・パワーを力強く感じさせる映像であった。原作「攻殻機動隊」は未観。今作に独特のSF設定としては、人間の脳とそれ以外の身体の全てを機械としたアンドロイドで、脳を「soul(魂)」ではなく「ghost(幽霊)」とイコールで結んでいることで、その差異はといえば魂は表象されないが幽霊は表象されるところにある、それは素子がネコや木製の門(その正体はよくわからない)を幽霊的に視覚で捉えられたことと関連するし、魂ではない幽霊には人間個人に固有の面影が反映されるため、不可避的に我々観客の側が幽霊としての彼女から元生きていた彼女=彼女の記憶の表象を彼女と共に追うことになる…というシンクロ感がきっとあり、それは心地の良いものだろう。偽の記憶を受け付けられ自身に娘がいると思い込んで疑わない男の姿を見て素子の仲間側が一体何が現実なのかそうでないのか…と呟くシーンからはポストモダン的な人間観が窺えニヤけてしまうなどした。機械=目的に向かって一直線に進む存在でしかないというある種の運命論的なことを肯定しつつ最期のシーンで人間愛的な再会を見せたのは、全体的に冷たいサイバーパンク物にほんのりとあたたかさが加わり笑みが溢れた。
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