りっと

ソング・オブ・ザ・シー 海のうたのりっとのネタバレレビュー・内容・結末

3.3

このレビューはネタバレを含みます

いいお兄ちゃんになるはずだった。でもお母さんは妹を産んだせいでいなくなったんだ。お前なんて、大っ嫌いだ。
そんな風に妹を嫌う少年は、母親が残した不思議な貝殻と妹の秘密のために、大冒険に出ることになる。
神話を元にした絵本のようなアニメーション映画。

まず本当に、小さな宝箱のような素敵な魅力を持つ素敵な作品だった。妖精をはじめ、神話の不思議な世界観と、それにあった絵本をそのままアニメーションにしたような作風がマッチしていて素晴らしい。

登場人物たちも可愛らしく、特にたくさんの妖精たちはどれもユニークで楽しい。また、主人公たちの家族は象徴的だ。
出産で命を落とした母親と生まれた妹、妻を失い悲しむ父とそれ故に妹を疎む弟、一刻も早く立ち直らせたいが故に無理に忘れさせようとする祖母。そういう現実にもいるであろう家族が、それぞれの傷に向かい合い、亡くなった母親に向き合い、互いの想いに向かい合い、共に前を向いていく。そういう現実のモチーフを、上手く神話の世界とそこでの冒険物語に当てはめて描いていたと思う。

本作は昔話の系譜を踏まえて作られていることも強く感じられた。基本的には冒険物語だが、出生に秘密があるという点で貴種流離譚の流れにもある。こういうことをきっちり踏まえているからこそ、物語としても重厚なものになっていたのだろう。
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