まつけん

みかんの丘のまつけんのレビュー・感想・評価

みかんの丘(2013年製作の映画)
3.8
ミカンの丘 (原題:Mandariinid)2013年製作/87分/エストニア・ジョージア合作
Amazonプライムで観ることが出来る映画。お勧めに出てきたので鑑賞。結構個人的には良い映画でした!2016年のアカデミー賞、ゴールデングローブ賞の外国語映画賞にノミネートしていたようで…そりゃいい映画な訳だと後で知るw
ミカン畑という中で起こる戦火と人間模様という静と動の緩急にやられる感じ。メッセージは反戦で、1989年から起きているアブハジア紛争下における局所的なお話。そもそもアブハジア紛争なんて知りませんよ!簡単にまとめたので気になる人は下の方で。

映画に戻ると、
◆あらすじ
年老いたみかん農家のイヴォは、アブハジア自治共和国にあるエストニア系移民集落で暮らしている。アブハジアはジョージアからの独立を求め、各地で紛争を起こしていた。エストニア人の多くは、戦争から逃れるために帰国していた中、友人のマルゴスと一緒に残っていた。ミカンの収穫を控える中、戦火がどんどん近づいてきていた。ある日、敵対する二人の負傷兵を自宅で介抱することになった。

基本4人で話が進んでいくので一応4人を紹介。
・イヴォ:紛争が始まってもアブハジアのエストニア人集落に残るみかん農家。敵対する兵士のアハメドとニカを、同じ屋根の下で介抱する。
・マルゴス:イヴォと共に集落に残るみかん農家でエストニア人。みかん栽培に情熱を燃やし、戦争中でも休む間を惜しんで収穫をする。
・アハメド:アブハジアを支援する義勇兵のチェチェン人。ジョージア兵との戦いで負傷し、イヴォに介抱される。
・ニカ:ジョージア人兵士。アハメドとの戦いで負傷し、同様にイヴォに介抱される。

少し、アブハジアの状況を知っていないと、だれとだれが戦っているのか分からないかもしれない。なんせ、ジョージア人とアブハジア人(アブハズ人)の直接対決というよりは、アブハジア地域に住んでいるエストニア人がジョージア人とアブハジアを支援する義勇軍のチェチェン人を介抱するお話だから。。
映画の内容自体は単純で、敵対する兵士が一つ屋根の下で介抱される中、お互いを罵りながらも徐々に、なぜこの戦争をしているのか、お互いを人として見るようになっていくといったお話。イヴォおじいさんの淡々としたお話、無駄な音がない映画が妙にいい感じ。言葉も英語ではなくロシア語?なのでどうせわからないし、気楽に観ることが出来ます。
ちなみに、アブハジア地区は、隣人のロシア人、ギリシャ人、ユダヤ人、ウクライナ人、アルメニア人など多民族がひとつの家族のように暮らしていたらしい。紛争時にはアブハズ人とジョージア人が助け合い、生き延びたというエピソードも多いとか。
(隣人で殺しあうと言えば、ホテル・ルワンダのツチ族とフツ族を思い出してしまった。。向こうは斧と鉈でしたが…)

◆アブハジア紛争とは
1989年から始まった、アブハジアがジョージアから独立を求めた武力闘争。ソビエト連邦の構成国であった、ジョージアが1991年に独立するにあたり、ジョージアの北西部にあったアブハジア地域を統合していったことから起こった。(ソチの側なんですね…)
独立に際し、ソビエト連邦期の憲法を破棄し、ソビエトに併合される前のグルジア民主共和国を復活させようとしたことから、アブハジアは自治権を求めて徹底抗戦。当初はアブハジア勢力をジョージアが抑え込み、アブハジア自治共和国政府を設立させるも、裏でロシア政府が指示していたと言われる武装勢力「チェチェン大隊」が義勇兵として参加し、大きく戦況が変わる。コドリ渓谷というところを前線として、一時停戦協定を結ぶも、2008年にアブハジアと同じくジョージアからの独立を求めていた南オセチア自治州(ジョージア北部)にグルジア軍が侵攻。これに対してロシア軍がロシア人の保護を名目に侵攻し、その流れでロシア軍とアブハジア軍が、コドリ渓谷を実効支配するグルジア軍を攻撃し、戦争がアブハジアにも拡大した。結果、グルジア軍はコドリ渓谷から駆逐され、アブハジア自治共和国政府も追放された。
今では、アブハジア共和国としてロシアやシリアが国として承認している。
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