みかんの丘の作品情報・感想・評価

みかんの丘2013年製作の映画)

Mandariinid/Tangerines

上映日:2016年09月17日

製作国:

上映時間:87分

4.1

あらすじ

アブハジア自治共和国でみかん栽培をするエストニア人の集落。ジョージア(グルジア)とアブハジア間に紛争が勃発し、多くの人は帰国したが、イヴォとマルガスは残っている。マルガスはみかんの収穫が気になるからだが、みかんの木箱作りのイヴォは理由を語らない。ある日、彼らは戦闘で傷ついた二人の兵士を自宅で介抱することになる。ひとりはアブハジアを支援するチェチェン兵、もうひとりはジョージア兵で敵同士だった。彼ら…

アブハジア自治共和国でみかん栽培をするエストニア人の集落。ジョージア(グルジア)とアブハジア間に紛争が勃発し、多くの人は帰国したが、イヴォとマルガスは残っている。マルガスはみかんの収穫が気になるからだが、みかんの木箱作りのイヴォは理由を語らない。ある日、彼らは戦闘で傷ついた二人の兵士を自宅で介抱することになる。ひとりはアブハジアを支援するチェチェン兵、もうひとりはジョージア兵で敵同士だった。彼らは互いに同じ家に敵兵がいることを知り、殺意に燃えるが、イヴォが家の中では戦わせないというと、家主が力を持つコーカサスのしきたりに則り、兵士たちは約束する。数日後、アブハジアの小隊がやってきて‥。戦争の不条理と人間性の尊さを描く感動作。多くの映画祭で受賞を果たしたエストニアとジョージアの初の合作。

「みかんの丘」に投稿された感想・評価

さと

さとの感想・評価

4.0
紛争地でみかん農園をしているおじいさんが、負傷した敵同士の兵士二人を自宅で介抱する話。

一緒に過ごしているうちに次第に変わる二人の敵兵同士の様子やおじいさんの言葉がとても心に響いた。
最初は威勢のよかった兵士たちがおじいさんに素を出し始めると意外と素直でいい人だったから尚更つらくなる。

どこの国の人間かなんて関係ないみたいなセリフが印象的で、大義上どうであっても結局は人間同士なのだというメッセージが伝わってくる映画だった。
この冬訪れた国、アルメニアのお隣で起きた出来事。それ故、リアリティが違った。背景になる世界情勢は複雑にからみ合っており、集中してないとあっという間に終わる映画だけども、何度も何度も見返して、そのたびに救いや答えがある映画でもあるだろう。大切な映画。
「死ねば皆土に還るというのに...」

「ボスニア内戦」
「コソヴォ紛争」
「エスニック・クレンジング」
なんかの東欧問題は高校の世界史で学習したので何となく知っていましたが、本作で描かれる「アブハジア紛争」の事は恥ずかしながら初耳。

鑑賞前のジャケットにあるハネケ、宮崎駿似の堅物そうなお爺さんからの威圧感にたじろいて借りるのをずっと躊躇い。鑑賞後はもっと勉強しなきゃと反省はしましたが、そんな自分でも問題なく理解できる分かりやすい構図で、適度なユーモアもある万人に勧められる戦争ドラマでした。

紛争には中立な立場のエストニア人の老人イヴォの家の近辺にて、対立関係にあるジョージア人とチェンチェン人の戦闘が起こる。結局生き残ったのは2名で、イヴォは彼らを自宅で介抱することに。しかし彼らは互いの銃弾で仲間を失い、自らも致命傷を負った敵同士。そのためイヴォは彼らと自宅では闘わせない」という約束を交わし、奇妙な呉越同舟暮らしが始まる。

という緊迫感ありまくりの設定なのだが、大部分を覆うのは自然な静けさ。【自宅】で繰り広げられる彼らの衝突も張り詰めた感じはなく寧ろほんわかさえしている。
しかし、気まぐれに訪れる【外部】からの部外者が持ち込む不条理な緊張感は、それとのコントラスト、突然性によって衝撃が強調されている。

こうして見事に戦争や宗教、土地という呪縛下の人間と、【人間】の違いを描きわけ、本作の主題であろう
【何が違うんだ、何も違わない】
というメッセージをじかに伝えている。
シンプルながらも真に迫ったそのメッセージは世界中の人々と是非共有したいものだ...。

ただ、エストニア人のお爺さんの視点には当事者意識が不足していて、観客という圧倒的第三者に寄せすぎていると感じた。戦争映画とこの題材にしては上映時間が短過ぎて饒舌に行き急いだ感もあり、立体感にも欠ける。
また、その補強として何となく哀愁を漂わせたようなイヴォの人物造形は個人的に残念。
でも、明るくは無いけど温かな余韻を残すエンディングには激しく同意です。

こんだけ観易く良くできたんだから、ミニシアターで映画好きに鑑賞されるだけってのは勿体ないし、道徳の時間なんかで広まって欲しいと切に思います。
なすび

なすびの感想・評価

5.0
「とうもろこしの島」を見たら「みかんの丘」も、見ました。

戦争→人間→戦争→人間、戦争という大きな力と人間一人一人の小さい動き、が交互に描かれている。やっと2人が心を通わせたと思ったら戦争の悲劇が起こり、でも最後は一歩前に進めていたことがわかる。

戦争をアクション映画として描くものは苦手だけど、人間の真価を問いただすようなこういう映画は何本見ても考えさせられるし背筋が伸びる。もっと作って欲しいと思うと同時に早く戦争がなくなってこのような映画が生まれないような、日が来てほしい。

今回は知らない単語だらけで久し振りに勉強欲が掻き立てられた。コーカサス、チェチェン、アブハジア、ジョージア(グルジア)、エストニア。ここら辺まだ詳しくないので調べます。

「とうもろこしの島」と併せて人々に勧めていきたい、準新作だけど借りてよかった。(後にGEOでは旧作だと知りショックを受ける)

お爺さんが主役の映画も気になり始めた、お爺さん俳優の深みがいい。
Tangerine

Tangerineの感想・評価

3.9
知らない戦争が世界には沢山ある。
板門店か、ここは。
ジョージアの音楽が日本の三味線に聞こえる。
あら…もう一声…

みどころ:
グッと来るエンディング
グッと来るエンディング曲
ありがち脚本と伏線っぽいブラフ
イヴォの残る理由が中二病
マルゴスの残る理由が弱い

あらすじ:
エストニア人のイヴォは故郷のコーカサスで独り暮らしの老人。だがそこは今や戦場、住人はイヴォと友人のマルゴスだけになっていた。
そこへやってきたのはアハメド、腹を空かせた傭兵。イヴォから食糧を貰い戦地に赴いたが、数時間後負傷者として舞い戻ることとなる。同じ場所で負傷した敵兵とともに…。

いつ戦禍を被ってもおかしくない故郷を離れない主人公、と来ればその理由が物語のキーになるのは必然。フォーカスは戦争自体よりイヴォ個人に合っており、彼がどの方向へどう進むのかが気になるところ。さあどう来る?!
…しかし残念ながらその結果は、破滅的な中二病ヒロイズム思考バリバリの現状維持なんですねぇ。。

あのねぇ、キリスト教徒もイスラム教徒も同じだと説く人物なんでしょ?それで愛する家族もいるのに自ら救われることを拒んだままおしまいってのは、人物設定が甘いですよ。“死に乾杯”して自分の傷ほじくるなんて愚行犯してたんじゃ、せっかくの善行もふいです。まさか傷の舐め合いをフィクションでやってんじゃないですよね?頼みますよほんと。。

その他乱暴な箇所はたくさんありますが、エンディングだけは抜群です。いやもうずっこいんですけど仕方ないです、良いものは良いです笑
終わり良ければ全て…ギリギリ良しかなぁ笑
限定的なシチュエーション、わずか4名の登場人物、そして低予算。それをほんの90分程度の短さで、国と国、敵と味方、人と人との捻れた関係をみごとにまとめている。

家のなかの男4人は、国同士の対立を比喩しつつ、一個人では人間同士として繋がりが描かれている。敵国同士の二人を指して「お前たちは、何が違うんだ?」と鋭い一言。

「とうもろこしの島」とは監督が違うみたいだけど、セットで扱われてるよね?今度みてみよう♫
戦争を見守る老人の映画。

なぜ人間は争い合うのか。
民族、宗教、思想、どれが違くてもそれは争う理由にはならない。
争う理由を無理やり作ってまでなぜ?
理不尽でしかない「戦争」という行為がいかに愚かなものか、それを強く思わされる作品。

90分に満たない短い尺の作品だが、心に突き刺さる良作でした。
ramu

ramuの感想・評価

4.5
戦争中のチェチェンのアハメドと、ジョージアのニカが、みかん農家のイヴォとマルゴスを通して変わっていく関係性が良いですね。
派手な銃撃は少なく、戦争映画としては静かな方ですが、1つの家に敵同士が暮らして居る様子に、最初は少しドキドキします。
でも1つ屋根の下に居ることと、イヴォとマルゴスの存在のおかげで2人に変化が訪れてきます。

何と言っても終盤の展開からの最後のシーンが良いですね。
ある行動をした後に、あまり自分のことを語らなかったイヴォが最後に、ある話をするのです。
そこからの、問いかけに対しての、
「何が違うんだ?」は響きましたねー。
イヴォだからこそ言えるこの発言は、とても重みがあって、そして温かかった。

好きなタイプの映画でした。
命の尊さ…

老人は1人木材を加工し、みかんの箱を作る。
2人の兵士が突然「腹が減った。飯をよこせ」と訪ねて来ても丁寧に対応。
兵士が去り、隣に住む同郷の友人とみかん狩りの相談をしている時、すぐ近くで銃撃戦が。
敵軍同士1名づつ生き残った兵士を、2人は介抱する。
老人の家で目が覚めた一方の兵士は、敵がすぐ隣の部屋で寝ている事を知ると「仲間の敵討ちだ、殺してやる!」と行動に出ようとするが、家の中で殺生は許さない、まずは怪我を治すのが先決だと老人は兵士をなだめた。
戦地の中の小さな家で奇妙な共同生活が始まった…老人は黙々と介抱をつづける


"面白い"映画ではなく"素晴らしい"映画。
啀み合う兵士達は"何"に捕らわれて、相手を敵とみなし殺めるのか。
人にはそれぞれの理念や信念が在り、それを受け入れるか否かによって、物の見方も大きく変わっていく。
相手を受け入れる事が、自らの敗北の様に思えてしまう為に、相手を理解しようとせずに傷つけるのかもしれない。
お互いが少しづつ理解し歩み寄るだけで、人は何一つ自分と変わらないと教えてくれる老人の強さの裏にある悲しみが胸を穿った。
兵士の「何故、ここを離れない?」の問に、「大好きだけど、大嫌いだからだ」と答える老人。
その姿は誰よりもたくましくカッコよかった。

素晴らしい作品だと思うので是非!
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