みかんの丘の作品情報・感想・評価・動画配信

「みかんの丘」に投稿された感想・評価

umakoron

umakoronの感想・評価

4.1
深すぎて、ひたすらに苦しい映画

それでも見て良かったと
心から思えた

人間の愚かさと
素晴らしさ

その相反する面を
小さな家の中だけで
表現しきった秀作

これだけ混沌とした日常でも
人としての尊厳を保ち
他者への愛を惜しまず
誰をも憎まない

常に社会に対し
何ができるかを
視点に生きる主人公の在り方に
惜しみない拍手を送りたい

美しい風景が
殺し合いの場所ではなく
平和な場所である事を祈って止まない
なべ

なべの感想・評価

3.8
 冷戦終結からソ連崩壊の流れの中で起きた小国家の独立運動のひとつにグルジア(今はジョージアと呼んでる)があった。ペレストロイカ以降、バルト海や黒海周辺でややこしい紛争が起こっていたのは日本でも報じられていたけど、いまひとつ切実に思えない馴染みの薄い国々だった。たまたまグルジアンポリフォニーが好きで、合唱曲をよく聴いていたのでかろうじて記憶に残っていたものの、グルジアがアブハジア(この国名も覚えてなかった。てかドラマに出てくる架空の国名やん!)を自分たちの領土としようとしてたことなんて全然知らなかったし、当のアブハズ人がこれに反対して民族紛争に突入したことも知らなかった。ましてやエストニア人のみかん農園(噂によると日本の温州みかんの苗木らしい)にグルジアとチェチェンのゲリラという組み合わせにはまったく理解が及ばなくて、一旦止めて背景を調べたほど。そのあたりのことはここにいちいち記さないけど、この映画をより楽しむには簡単に予習して臨んだ方がいいと思う。

 さてこの作品、戦争映画としては設定がとてもシンプル。戦争の不毛さ、憎しみと殺意の根拠の曖昧さなど、描き方が王道中の王道。フルメタルジャケットや地獄の黙示録のような難解な作品を経験済みの感性には若干の物足りなさも感じられるが、むしろその昭和な正攻法さが新鮮といえば新鮮。素直な思いがズバッと斬り込んでくるカンジなのだ。
 みかん農園で送る日常によって、敵対する負傷兵の殺してなんぼな戦争脳が改めて人間性を獲得していく過程が丁寧。食べることって大事なんだな。
 もちろんみかん農園は戦況如何で一瞬で戦場と化すわけで、たとえ戦闘の規模は小さくても、唐突に殺意が訪れる。容赦なし。
 それだけに戦争とは一線を画すイーヴォの厳しい覚悟と揺るぎない生き様が尊い。そしてこの上なく悲しい。

 そうそう、エンディングの曲が始まったとき、ルー・リードの「ワイルドサイドを歩け」のグルジア版だと思ったのね。なんてセンスなんだろう!と感激したけど、ボーカルになると全然違くて、なんかクソダサい歌だった。歌詞の内容もなんかよくわからん感じで、こんなんなら字幕をつけてくれるなと。最後の最後で変な曲で締め括られて、チェッとなったことを書き加えておく。
K

Kの感想・評価

4.5
アブハジア自治共和国のエストニア人集落のみかん農園を舞台に、そこに住むおじちゃんと敵対する負傷兵たちの姿から静かに描く戦争。

一度知り合って語り合えばただの人間同士で、目の前の人間に憎しみなんてないことに気づく。そうしたら昨日まで殺し合っていた理由なんてわからなくなる。

殺す権利など誰にあるのか。何が違うんだ。

世界中の人間がこのおじちゃんだったら戦争なんてないはずなんだ。
N

Nの感想・評価

4.0
眩しい日差しが綺麗で静かでとても好きだった。
みかん畑とイヴォとマルゴスの家しか登場しないのにも関わらずあんなにも重厚感のあるストーリーを映し出せるのすごいなぁ。
ベージュやカーキの褐色の服装がこれまた似合う似合う。
その中でのオレンジがたまらなく映え、瑞々しさが増す。

何が違うのか?という問いかけは簡単のようで、何も違わないと答えることがどれほど難しいことか。
アハメドとニカの敵意もわからなくないし、許すという行為がどれほど難しいのかも実感する。それでも生活を共にし段々と違いすらもわかり合っていく。最後に実感するきっかけが別れであるのが皮肉ですが、あのカセットテープを聴く流れがとても美しかった。
やっぱり絶望の中に少しの希望が差し込むシーンが好きなので、イヴォとニカが未来を語り合うシーンがたまらなく良かった。イヴォがはじめて見せる笑顔も。
戦場でジジーが敵兵同士の2人を介抱する話
ジジーは何喋っても深いな!!
ニカが頑なに「歴史」「教育」と主張するの怖いよ〜
みやお

みやおの感想・評価

4.3
みかんの丘のある田舎で紛争の最中、2人の兵士が負傷。その2人をそこで暮らすイヴォが家に連れ帰り介抱する。実は負傷した2人は敵同士…
イヴォの元で変わっていく2人(変わっていくというか、素に戻る?かな)。
静かで確かな反戦映画。
最後のカセットテープがいい。
素 晴 ら し い 。

お世辞抜きに良い映画。
出会えた事に感謝したい。

ジョージア(グルジア)とアブハジア自治共和国の間で紛争が起き、アブハジアにいたエストニア人達はほぼ祖国に帰ってしまったが、イヴォ(レンビット・ウルフサック)とマルゴスだけは集落に残った。ある日、近くで戦闘があり、彼らは負傷した2人の兵士をイヴォの家に運び、そこで介抱する。しかし、その兵士達は互いに敵対するチェチェン人とジョージア人だった—— 。

ソ連邦崩壊後、ジョージアで起きたアブハジア紛争は、94年に停戦合意したものの、緊張は今も続くと言われる。

みかん箱を作るイヴォ。
みかんを栽培するマルゴス。
紛争が起きようと、目の前のみかんの収穫の事を気にする2人の老人達。

彼らが命を救った兵士達は、同じ屋根の下で敵兵がいる事を知り、殺意を剥き出しにする。

しかし、イヴォはそれを許さない。

血気盛んなチェチェン人のアハメドと、物静かなジョージア人のニカは、歪み合いながらも、命の恩人に敬意を表し、イヴォの家の中では殺し合わないと約束する。

弦楽器の物悲しげな音楽が耳から離れない。

敵対する兵士達と命の恩人。
まるで聖書物語か寓話を読んでいる様な感覚。

兵士達は次第に気付き始める。

どの国の生まれでも、
何人の血でも、
何が違うと言うのだろう、と。

皆が笑顔を見せ、
平穏な空気が微かに生まれた次の瞬間——
決まってそれを壊すのは、
爆発、招かれざる客、銃声。

"殺す、殺してやるって
そんな権利、誰が与えた?"

イヴォの言葉が魂に響く。

ジョージア出身のザザ・ウルシャゼ監督が、憎しみの中で生まれた赦し合う心を、叙情的に描く。

アブハジア紛争なんて、全然知らなくてOK。僕だってそうだった。この普遍的な物語は全世界に向けられたものだから。
やっぱり、私の心のどこかにロシア語が落ち着ける場所がある気がする
い

いの感想・評価

4.0
寝ちゃう人はいるかもしれないけど、静かで温かい映画だった。

負傷した敵同士であるジョージア人とチェチェン人を家で看病することになった老人の話。
荒っぽいけど素直で良い奴なチェチェン人と、物静かだけど嫌味がきいてるジョージア人。
お互い殺す殺すと言い合いながらも、恩人のイヴォの前では叱られた犬みたいに大人しくなるのが可愛らしい。

同じ屋根の下で暮らしてみれば、敵だって同じ人間。二人の関係を静かに見守りときに叱るイヴォのお父さん感が良かった。
K

Kの感想・評価

3.8
「何も違わない」この映画のメッセージはここに詰まっているのだと思う。序盤でなんとなく方向性は分かる。そこに説教くささや強引さはなく静かで丁寧な配慮が感じられる。急に降りかかってくるもの。生活と隣り合わせの戦争。ときどき映るミカン畑が癒し。多くは語らずともこれが戦争なのだとずっしり伝わってきた。カセットテープ。
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