kanni501

EDEN/エデンのkanni501のレビュー・感想・評価

EDEN/エデン(2014年製作の映画)
4.0
2016/02/12@早稲田松竹


主人公ポールのDJの具合、ダフトパンクに関しても、その素晴らしさを正しくはわからないが、劇中の楽曲に関してはどれもが心地良く、そのリズムに陶酔できる。音楽体験としては、かなりの量の音楽が流れていた。

観客にわかりやすくつくられた映画とはいえないが、この監督のこのスタンスには「もっと親切につくってくれてもよいのでは?」の気持ちを抱くものの、能動的に映画を読み取ろうとする見方の態度で映画鑑賞できるので、個人的には好みである。過剰な説明描写はないし、むしろ説明が足りていないのだが、そこを余白と感じて読み込むおもしろさが含まれている。正解や正誤ではなく、解釈をたのしめるというか。

とはいえ、顔の見分けのつかないクラブの暗さのなかでも平気に会話も物語も進むし、セリフの節々には物語本編で回収されない固有名詞も出てくるし、2部構成のアンバランスさもハンパないし。冒頭部の、森のなかのシーンからすでに主人公の顔の見分けに苦戦を強いられたし。ニットをかぶっているほうと、そうでないほうという、わかりやすい対比があるものの、顔のつくりは似過ぎていて、いやあ、こまったな。

しかし、とりわけ金髪ショートカットのルイーズと出会うあたりから、映画物語が活きはじめてきたと思う。惹かれあうシーンだけでなく、ふたりが並んで歩く、座る、そういったなんでもない居佇まいからでも、主人公ポールが人生において相応しいパートナーに出会ったということが映像で目に見えるカタチで伝わってきた。ゆえに別れたのち、再会したあとの海辺シーンなど、あまりにステキ過ぎる。

DJコンビを組むと人気を集めて、活躍の幅を広げてゆき、このまま成功すると思いきや、先端の音楽から少しずつかけ離れてゆき、世間の注目からも遠ざかってゆき、酒、ドラッグ、借金、親にお金を泣きつく、、、大人としては恥ずかしくらいイタイ境地まで陥ってゆく。この20年間の軌跡。生き方を行き詰まらせてゆく姿の果てに女性DJ?がMacでダフトパンクのwithinを流しているシーンが待っているとは、、、これをあまりにステキだと思えてしまった。この無情感、敗北感。ハンパねえッス。そしてそのあと、まさかのまさかのまさかの、詩による、音楽ではなく言葉による、わずかな未来のキザシを思わせ、、、


映画の魅せ方に特徴があり、これに魅了したののだが、成功や出世にとらわれること少なく、じぶんの目的や夢を追いかけてゆくことに立ちはばかってくる困難たちに、どれだけ抵抗できるのだろうか。と、そんなことを思う。

こんなふうに挫折してゆくというか、不本意な未来に陥って行く無様な人間のさまは、けっして我がごとではありませんからネと断じることができないじぶん自身ゆえ、ふだん眼を伏せている現実的ことがらのさまざまを思い、パラダイスをロストしま主人公ポールのラストシーン以降の、ストーリーに思い巡らしながら劇場をあとにした。。。
kanni501

kanni501