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マルメロの陽光のDのレビュー・感想・評価

マルメロの陽光(1992年製作の映画)
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エリセの前2作とは趣向が異なり、ある絵の完成に取り憑かれた男、スペインの画家アントニオ・ロペス・ガルシアを描いた映画。毎年秋に庭のマルメロの実に向う恒例行事、否それはまるで修行僧のような佇まいだ。定点観測的にじっくりと、画家が捉えたいマルメロの木の上に陽が射すとても美しいほんの一時、その様をひたすらに追う記録映画。その姿勢はまるで、10年に1本の寡作の名匠、ビクトル・エリセ自身の投影であるよう。そんな本作そのものが陽光のように輝いている。エリセだからこそのなせる業である、このゆっくりと時が流れる間の表現を操り、フィルムに納め、そんな贅沢を体験できる貴重な珠玉作。スペインに行ってアントニオの絵画をみたいが、なかなか辿り着けなそうなので、日本でアントニオ展を開催して欲しいと切に願う。カンヌ映画祭審査員賞。

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