マルメロの陽光の作品情報・感想・評価

「マルメロの陽光」に投稿された感想・評価

もう大変な映画だ。

マルメロを上手に描けない画家の話。

なんというか、良い意味で最高の環境映画のような雰囲気を持っている。
寝てしまっても心地良い映画、という新しいジャンルを確立したと思う。
くみ

くみの感想・評価

4.5

このレビューはネタバレを含みます

映画作家も画家も、ひいては詩人も「どのように世界を切り取るか」という問いかけが巡るけれど

監督であるエリセとこの作品で取り上げられている画家アントニオ・ロペスは世界に対する向き合い方が似ているような気がした。

たわんだ枝と、黄金のマルメロの実に降り注ぐ陽光。ロペスはそれをキャンバスにとらえるために、マルメロの木とそれを取り巻く空間に寄り添う

そうしているうちに時は瞬く間に去り、豊穣な秋は寂寥の冬へ。彼が描き始めた頃のマルメロの木はもうそこにない。実がしぼみ木が枯れてしまえば、ロペスはついに完成させることができなかった。

それは寡作なエリセを思い起こさせる。エリセはロペスが絵画と向き合う様を、時間が溢れ出してしまいそうなくらいの豊かなイメージの連鎖でスクリーンに映し込む。

そのせいか、ドキュメンタリー性が削ぎ落とされて、劇映画的な虚構性がそこに居残る。ドキュメンタリー作品だけど、いわゆる映画的瞬間があったんです

一人の映像作家と一人の画家のポエティックな結び付き。彼らの作品は世界を美しく見せる鏡のよう。空気は澄み、時はゆっくりと流れ、事物は事物そのものを越えて有機的な広がりを見せる。

ーーー

・強靭なミメーシス
・絵画の奥行きの錯覚
・枠
作品を想像力で補完せず、どこまでもリアリティを大切にしていた姿が印象的
これは画家の「失敗」を描くとともに、彼が捉えきれない現実の光に、映画はいかに迫ることができるか、つまり映画の映画。そして、同じく「失敗」を繰り返してきた、エリセの自画像でもある。

マルメロの周りに集う人々は多国籍で、立場もバラバラ。彼らが一本の木を、果実を通してつながっていく。あの腐っていく果実の隣で新しい実が成るとき、映画は世界の真実を確実に捉えた。
A子

A子の感想・評価

3.3
映画観ながら寝ることなんてないのに、ちょっと寝てた。
穏やかで綺麗すぎる映画も問題だな。
文字どおり陽光(ひかり)を求める映画~ビクトル・エリセ「マルメロの陽光」

この作品が公開された1992年。少し思い出してだけでも
日本映画では
「月はどっちに出ている」(崔洋一)「お引越し」(相米慎二)「ソナチネ」(北野武)「ヌードの夜」(石井隆)「ゲンセンカン主人」(石井輝男)等など

外国映画では
「許されざる者」(イーストウッド)「レザボア・ドックス」(タランティーノ)「友だちのうちはどこ?」(キアロスタミ)「戯夢人生」(候賢考)他にも「野生の夜に」や「ザ・シークレットサービス」から「オーソンウェルズのオセロ」まで公開された本当に豊かな一年の中でビクトル・エリセという寡作映画作家の待望の新作が公開されたのです。

文字通り映画の存在そのものが陽光(ひかり)のような逸品でした。ドキュメンタリーであることは聞いてましたからドラマ性が希薄だと思ってたらそれも杞憂。一日にうちでたった二時間くらいしかチャンスのない射し込む陽光を捉える綿密なふるまいは美術所業についてまったく素人の私にも充分サスペンシフルでした。

映画の中でアントニオが絵を完成させることは出来ませんでしたが奥様が描かれた横たわる喪服姿の彼は今にも起きだしてきそうでしたね。

この映画でアントニオが絵を完成できなかったように我々がビクトル・エリセの最新作を望むのも淡い夢なんでしょうか?
sunflower

sunflowerの感想・評価

5.0
唯一無二。
そして、人間賛歌。

そんな言葉がふっと浮かびました。

個人的には「ニーチェの馬」に出会った時くらいの衝撃で、片時も目が離せず、あんなに静かにゆったりと時間が流れていくにもかかわらず、物凄いものに出会えたことを確信してドキドキワクワクしてしまうような、そんな140分間でした。

アントニオ・ロペス・ガルシアを見ていると、自然とある日本人画家が浮かんできました。
彼らに共通するのは、絵だけに限らずあらゆる物や人に対して、常に愚直で真摯な姿、そして生き方。

おそらく本人達は、愚直だとか真摯だとかそんなつもりは毛頭なくて、そうあることが当然過ぎて、その点について省みることすらないのでしょうけども、その姿がその生き様が、とても愛おしくて切なくて、まぶしくて、そして神々しくすらあって。

なんだかよく分からない涙がこぼれていました。


こんな風に生きられたら

こんな風に、生きて行けたなら
メモ帳

メモ帳の感想・評価

4.0

このレビューはネタバレを含みます

端正な構図の数々にうっとり。どのシーンにも映画的時間が流れていることが凄い。これは決して当然のことではなく、長回しで撮影したからといって、こうは時間は流れるものではない。いかにエリセがどこまでも映画の人であるということか。意表を突く終盤の飛躍には、もう、、!
FukiIkeda

FukiIkedaの感想・評価

3.3
エリセ。
とにかく美しいマルメロの黄色とワンコのイメージ。
しかし何度も瞼がさがってきながら観た記憶…。笑
そして朽ちていくマルメロ。
☆☆☆★★★

長編デビューから30年で僅か3本しか監督していないビクトル・エリセが有名な画家の描く果実[マルメロ]を通して自分の置かれた立場を思う存分にフイルムに焼き付けた執念の作品。

果実は日々大きくなる為に画家は納得しない、何回も何回も描き直しては遂に完成を見ずに朽ち果てていく。
映画の中でインタビューを受けるが、観ているとこの作品が画家を通して実は彼自身による映画論なのではないかと思えてくる。
映画作りは思い通りにはいかない(時折資金が無くなりビデオ映像等々)…朽ち果てた果実はやがて養分となり地に帰るが、思い通りにいかない自分の姿を朽ち果てていく果実に投影していたのだろうか?
※ 1 答えは今後果たしていつ公開されるのかすら分からない新作に期待したい。

※ 1 結局その後もエリセの長編は公開どころか製作もされず。僅かに数本の短編のみ。
最早、年齢的にも新作は難しいのか…。
兎にも角にも、本人にヤル気を出してもらわんと(-_-;)

(劇場鑑賞/シャンテシネ?/日時はメモを調査中)
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