カトヤン

黒衣の刺客のカトヤンのレビュー・感想・評価

黒衣の刺客(2015年製作の映画)
4.5
鳥肌が立つほど美しい映像の連発。
といってもストーリーは全体の2割ほどしか把握できなかった。

これだけ何も説明してくれない映画も珍しい。中国史によっぽど詳しいか、あらかじめ映画の背景を予習していかないと一体何の話をしているのかすらも分からなくなる恐れがあると思います。

この映画に監督賞を与えたカンヌの審査員達は中盤唐突に現れる妻夫木聡が日本人役とゆうことがわかったんだろうか?(セリフは殆どないが妻夫木聡は映画に感情的な色を添えていたと思う)
遣唐使という言葉すら劇中に登場しない。そんな不安を感じる程手がかりがない。それでいて画面は全く動じず、観客に手の内を見せないでおく余裕すら感じさせる。

しかしそんな事はどうでもよくなる程映画は素晴らしいと思った。
映画には物語もテーマも絶対的に必要ではない。と思う。ただ「カメラが人を写す原理的な力」さえあれば確実に「映画」になる。
この作品がその実証であるとさえ思いました。

ホウ・シャオシェン特有の風と光を使った映画の時間と現実の時間がシンクロするような体験。
初めてであろうスピーディなアクションシーンも静謐さを色濃く残す。

こんなハイレベルな映画を作れる人が現在世界にどれ程いるだろうか。敬意を込めてこの点数です。
カトヤン

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