戦後世代による形式的表層的な戦中戦後悲劇
原作者は1930年生まれということで戦争真っただ中に生きた人のようだ。それら戦中戦後の経験を元に1969年に発表した文学作品が「おかあさんの木」。とはいえ映画だけの判断では実話というよりはフィクション的要素が強いという印象。
監督は1950年生まれ。物心ついたころには戦後の混乱も治まっていただろうし、肌感覚的な戦後記憶があるかは不明。
そういった事情を考慮すれば本作が戦中悲劇の形式的表層的な描写に終始したのはある意味仕方ないことなのかもしれない。
とはいえ各エピソードの中には興味深い点もあり、
・桐は成長が早い。
・飼い猫まで戦地に送る毛皮用に供出を強要された。
・徴兵・出征する息子の足にすがるだけで「非国民」として不当な暴力を受け、特高から拷問取り調べを受ける。など
本作が戦争悲劇を伝える普遍性を有しているかどうかは私には分からないが、中には十分深く知性・感情に作用した方もおられるかもしれない。それなら誠に結構なことではある。
総評二つ星
012009