トムヤムくん

ぼくとアールと彼女のさよならのトムヤムくんのレビュー・感想・評価

4.3
パロディ映画の製作が趣味のグレッグと、仕事仲間で幼なじみのアール、そして白血病になったレイチェルの話。

「先に言っておく、彼女は死なない」

難病ものという点が何処と無く日本の映画に近いノリを感じたのだが、ある種“挑戦的な脚本”と“監督のセンス”で、ポップで軽妙なストーリーになっており、今までに観たことのないタイプの映画で好きだった。

主人公はかなり独特で一癖も二癖もあるし、レイチェルのことを思うとヤキモキするシーンも多い。しかし、主人公の視点から物事を、世界を、俯瞰的に描くことで、気付けばその癖にまんまと魅了されていて、一緒になって笑って怒って泣いていた。

そして、ラスト数十分の展開は鳥肌モノ。パロディ映画を創ることしかできない主人公だからこそ描ける物語であり、彼の心情の変化に気付いたときの興奮は計り知れない。なんなら、終盤この映画の存在そのものも感動映画への皮肉になっている気がして、もう全てにおいてずっと震えてた。

間違いなく、映画が好きな人ほど刺さる。ここまで「秀逸」という言葉が似合う作品も珍しい。完璧だった。