あつき

美女と野獣のあつきのレビュー・感想・評価

美女と野獣(2017年製作の映画)
5.0
『美女と野獣は現代社会へ向けてのダイバーシティ推進映画』
主人公二人は皆と違うことで疎まれる。村で歌う小学生の列は男子だけ。女子は洗濯に励み文字すら読めない。

エマ・ワトソンのベルの演技とハーマイオニーとを比較し綺麗だとか語る人がいるが、それならば、彼女が国連組織で女性の人権問題についてスピーチを行っていることや児童婚を問題視しアフリカを訪問していることを重ね合わせてもいいのでは。ベルの芯の強さはきっとそういった経験が反映されたもので、エマ・ワトソン自身の強さでもある。また、アニメ版の作詞家としてアカデミー賞も受賞したハワード・アッシュマンも実写版監督のビル・コンドンもゲイであることを公言。そういった作り手達によってつくられた映画が「美女と野獣」。

確かにハリーポッターシリーズが好きな身としては、閉じ込められたら「レダクト!」と叫んで粉砕して欲しかったけれど知恵で父をサポートするのもよかった。一方で、野獣vsガストンでは「ステューピファイ!」とは言わなくともただの傍観者ではなく何かしら野獣を手助けしてアニメ版と差別化してもよかったのでは。

ガストンの子分のルフウのキャラへの抗議から世界の一部地域で上映が中止になったり、キャビネットにドレスを着せられ女装した男性がうっとりした表情を見せたり、ベルがただの読書好きではなく発明家としての顔を持ち女の子に字を教えるなどより自立した女性として描かれたり、アニメ版から変化した点もいくつかある。冒頭で現代社会と書いたが、物語の本質が変わらず公開されていることから、実は20年以上前から今まで人は未知のものへの差別や恐怖を捨てられないままだと分かる。

これからの人生で忘れてはならないことを教えてもらえた。
あつき

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