森崎

美女と野獣の森崎のレビュー・感想・評価

美女と野獣(2017年製作の映画)
3.0
何かが思っていたより違う。…いや、もちろん感動はしたけれど何だこの晴れない気分は。

オルゴールを制作しながら歌うモーリスの曲は凄く良くて、家族を思う父親としての存在感が。ル・フゥもただの腰巾着としてではなく知性や良心がありつつも同性愛的な好意でガストンと行動を共にしているから終盤にかけての動きに説得力がある。
映画だからこそ何でもできる分、画が装飾過多で目が散りがちになりつつもその豪華さは素晴らしい。

でも、「野獣」という醜い存在がそこまで話に関わらず、どちらかというと人と違うという要素を視覚的に表現しているだけのよう。
相手に対して「歩み寄る」ではなく「深く知ること」を主題に展開する話なので長く一緒にいればくっついてる印象。城の図書すべてをプレゼントするシーンは目隠しして「さあどうぞ!」ではなく「あげるよ」とさらっとしていて盛り上がりに欠ける。本が読めないビーストに読み聞かせをすることで二人の距離が縮まるのが好きだったんだけど、映画ではビーストも高等教育を受けているため趣味が合うもの同士惹かれるべくして惹かれた感じに。
本といえば最初の街のシーンでベルが持っている本はミュージカルではジャックと豆の木だったのに対して映画では確かヴェローナの二紳士、あらゆる本を好みながらもどこかロマンス好きを強調させるよう。(ロマンスには辺戸が出るぜ的スタンスの野獣とそれも良いものよとするベルの会話等)

あと、ディズニーって片親か既に両親が居ない設定が多いから特にバックボーンは求めていなかったりするけれど、ベルの母親の話が出てくる。それまでは良い、ただ展開するために野獣が外界を覗く手段が二つに増えてしまったことが良くない。野獣はベルのために外界を覗くたったひとつの手段であった魔法の鏡を渡してしまうから彼のベルへの愛がどれほどのものかと説得力や重さ、純粋さが伝わる。それをなぜ増やした。増やすくらいならもう少し曲があったっていいじゃない。
ガストンって本当はもっと可愛いヤツなんです。「ひとりよがり」というこの俺様には街一番の良い女が相応しいだろ?っていう妄想ぶっちぎりの曲がカットされて戦争後の喪失感を埋めるためにベルをモノにしたいというところ、街の皆から盲目的に英雄扱いされている訳ではないというところ、ベルの気を引くためにまず本を褒めるところからもコイツやばそうだな…と思っていたらビンゴ、なかなか凶悪な奴になっていた。民衆を煽り城へと向かわせる口振りと頭の回転も恐ろしい。

映画は130分。歌はもっとあって良かったんじゃないかな…。老婆が魔女に変わるシーン等、どちらかといえば休憩含めて165分のミュージカルの方がテンポも見栄えも良くて綺麗な感じがあった。


今回は字幕で鑑賞。
エマ・ワトソンのベルは少し低めの歌声で知性や落ち着きを感じさせる。ユアン・マクレガーの自由に歌っている感じはルミエールにぴったり。ガストンはキャラこそ怖いけれどルーク・エヴァンスの歌声が比較的明るく優しく、そして甘いおかげでやり過ぎることなく格好良かった。
森崎

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