Mila

美女と野獣のMilaのネタバレレビュー・内容・結末

美女と野獣(2017年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

キレるプリンセスがたまらなく美しい

ベルがガストンや野獣にキレるところがお気に入り。とくに、野獣に対して「気は確か?何があっても(晩さん会には)行かない」とキレるところ。囚われの身でも、怯えて幸運を待つだけじゃなくて、敵に面と向かって、言葉でしっかり意思表示をしているところが素敵。(しかもキレても可愛い)

キレる、という表現は少し軽率で、反論するに近いかもしれない。でも、そこには明らかに怒りが混ざっていたし、「反論」だと少し優等生すぎる気がする。人間的に接したからこそ愛しあえるところまで行き着いたのだと思う。感情も意見も、本音をぶつけあうのって素敵だなって思わされたし、美しかった。

ベルのドレスに注目してみると、まず、あの黄色が城の人たちにとって光の象徴だということに、恥ずかしながら初めて気がついた。それから、あんなに美しいドレスに感嘆する様子を全く見せなかった。むしろ、一度解放されたのに野獣のもとへ戻る時、邪魔だからか、ぽいってした。

本当に大事な人のためなら、例えどんなに美しいものでも簡単に手放す。ベルの心がいかに自由か、なぜ彼女が光になる資質があったのかっていうところの描き方が、映画的でスマートで上品でいいなぁと思った。


【ワトソンさんでよかった!!!】
もはや当たり前だけど、どうしても言及したいのが、「エマ・ワトソンがとてもとても美しかった!!」。あどけなさが残るルックスでプリンセス像をしっかり守りつつ、個性も芯も伝わってくる役柄と演技は「憧れの女性」そのものだった。歌もクセのないストレートな声も明るいミュージカル調に合っていて、字幕で見てよかった!

実はこれを観る前、ワトソンさんが美女と野獣と時期的にかぶるという理由でララランドの出演を断ったために、ララランドにストーンさんが配役されたという記事を読んでいた。でも、どちらも鑑賞して、それぞれの最終的な配役に感謝した。

少し失礼だけれど、どんなに演技が上手くても、あんなに美しいワトソンさんが「売れない女優」だと言われても全然しっくりこなかったと思う……。逆にストーンさんは少しハスキーな歌声だったし、顔立ちに個性と大人の色気があったし、役になじんでいたと思う。でもやっぱり、より普遍的に一般受けする「美女」は、やっぱりエマ・ワトソンだなぁって。

それに、ワトソンさんは現実でもしっかりと意見を表明して行動する人。今回の衣装作りにも、どういう素材を使うかについて倫理的な意見を出したみたいだし(動物の毛皮とか)。だから、いい意味でベルの挙動に説得力と力強さのフィルターがかかったのが、いっそう素敵だった。


【野獣の歌が地味によかった】
今回泣いてしまったシーンは、ベルへの愛を自覚した野獣が、もう呪いを解くための時間がないにも関わらず、ベルの父のピンチを知りベルを村へ帰すところ。

やっと愛を知った野獣だったのに、それをみすみす自分の手で、しかもベルの気持ちをしっかり確かめる前にベルを手放してしまった。もしかしたら、ベルはもう帰ってこないかもしれない。愛した人との突然の別れがとても切なかった。

そこで、ベルを待つ野獣が歌ったのが「たとえ目の前から去ろうとも愛は生きている、ベルが帰るのを待っている」っていう趣旨の歌。劇中でその野獣のソロを聞いたときは、ミュージカルらしいセリフっぽい歌だったので自然に受け取った。でも、エンドロールで主題歌"Beauty and the Beast"が流れた後、この野獣のソロで締めたのは若干違和感があった。一番盛り上がったところで締めるのではなく、この切ない歌で締めるのか、という意外性。 これは、一緒に見た人も同じことを思ったみたい。

ひとつ理由として考えられるのは物理的な問題で、Beauty and the Beastを早めに流したかった説。せっかくアリアナ・グランデという歌姫を使っているし、エンドロールの途中で退出してしまう人を取りこぼさないように早めに流しておいた方がクチコミ対策としてスマートだと考えた可能性があると思う。ただ、全体的にメッセージ性の強い作品だと思うし、別の考え方もしてみたい。

もうひとつの説として、"Beauty and the beast"この映画のテーマにぴったりとは合わなかったからではないかと思う。 主題歌の歌詞は「真実の古い物語」を歌ったもので、二人の出会いは運命的であり、なるべくして恋に落ちたという印象を受ける。
それに対して、今回の作品ではこんなことを伝えたかったのではないだろうか。この運命は、偏見や周囲からの批判から自由な二人の意思の上に成り立った。だからこそ美しい。

同時に、より多くの人の心に残るように、野獣のソロを最後にしたのではないかとも思う。"Beauty and the Beast"は二人がまさに恋に落ちたときに流れた歌だ。恋に落ちる瞬間なんて、もうとっくの昔という人も多いだろうし、恋に落ちる瞬間は美しいが愛の絶頂ではない。

それから、「目の前にいなくても愛は生きている」というメッセージは、すでに大切な人を亡くした人や遠く離れて暮らしている人にも訴えかけることができる。私も実際、その人のことを大切に思っている限り、離れていたり長い間会っていないからといって、愛さなくなったとはいえないと思う。

見れば見るほど、現代を生きるいろんな立場の人の心を掴む、丁寧なストーリー。。新しさはないけど、普遍性と現代らしさを融合して映しだす。ジブリもだけど、大人になるほどディズニーのすごさに気づかされるなぁ。
Mila

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