じゅぺ

ファンタスティック・フォーのじゅぺのレビュー・感想・評価

1.0
アメコミファンのための日本最速試写会とかいうイベントで見てきました。鑑賞直後は頭にアタマが昇過ぎてまともなレビュー書けなさそうだったのでしばらく冷却期間挟みましたがやっぱりこの映画、相当問題あると思う。試写会直後に本作をボロクソに書いたツイートがわりと拡散されて20世紀FOXの担当の方には申し訳ないと思ってます…でもホントに酷かったので…点数も思い切って極端につけました。公開2ヶ月前なので細かいところは書けないのですが、以下思ったところを述べたいと思います…

まず、みなさんご存知のようにジョシュ•トランク監督が主演のマイルズ•テラーをはじめとするキャスト陣から撮影スタッフ、プロデューサーのサイモン•キンバーグや20世紀FOX上層部など周りの人間と全くそりが合わず、最終的に編集作業からしめだされてしまい、監督の意図した作品とはかけ離れたものが公開されてしまったというのがもっぱらのウワサ。撮影直前の脚本リライト要請、製作費の大幅削減、完成後スタジオから手直しの要求が入り追加撮影をした、などいろんな情報が錯綜してるあたりホントに制作現場は混乱していたんでしょう。モロに作品の完成度に響いてしまっています。

いちばん問題あるのが作品の構成が非常にアンバランスであること。もうメチャクチャです。主人公リードの天才的科学オタクだった少年時代から始まり、やがて異次元世界への転送装置を開発するプロジェクトに参加、アクシデントから超人的能力を得るまでに(時間を計ってないのであくまで体感的に)全体の3分の2ぐらいを使ってしまう。ここらへんかなり丁寧に描写されており、世界観としてはわりと好きです。キャラはがんばって時間を割いて魅せようとしています。それでもモッサリした違和感のある編集、最終的に投げっぱなしになる伏線の数々のせいで、振り返ってみると前半は単なるスローテンポで退屈な人間パートになってしまっています。尺が長い割りに全然キャラに魅力がないのはなんなんでしょう?リードくんは良かったかな。ベンのキャラはペラペラ、スーとジョニーの兄弟関係も面白いけど意外に直接の会話シーンが少なかったり。ドクター•ドゥームことヴィクターも自分的に好きなキャラ付けなんだけどヴィラン化してからは全く生かされず。見ればわかると思うけど、彼とFFのメンバーの関係性が前半パートでやりっぱなしになっていちばん勿体無い伏線なんじゃないかな。ざんねんすぎます。ここらへんはまだトランク監督がやりたかった要素が残っている部分なんでしょう。たしかに面白くなりそうな材料は作中いろんなところに散りばめられています。予告編にもある少年時代の学校での「空飛ぶ車」のエピソードはそのまんま終盤の展開への伏線にするつもりで、じっさいに撮影もされていたみたいなんですが(リードが密かに開発していた空飛ぶ車でドクター•ドゥームとの戦いに向かうはずだった?中盤に一瞬だけそれっぽいガジェットが映っていたような気がしますが、気のせいかな)完成品を見るとその気配は微塵もないです。これだけ見ても作品ガタガタなのがわかります。

そして、問題の中盤以降の展開なんですが、これがもう絶望的に酷くて、どう考えても未完成品なんですよ。もはや映画として成り立っていない。ぶつ切りのカットの連続で、明らかに撮影しきれていないの思われるシーンがあります。FFが能力を手に入れてからの展開は一部の方の指摘にあるように、午後のロードショーとかで2時間以上ある作品が無理やり1時間30分の尺に収められているようなイメージ。シーンごとのつながりがないのでキャラの行動も、ストーリーもまったく説得力を持ってこないんです。本来監督は「能力を手に入れた若者たちの葛藤」を描きたかったみたいですが(それ自体手垢が付くくらいテーマとして扱われてきてもはや陳腐化しているのですが)登場人物にリアルな悩みや葛藤がほとんどと言っていいほど見られません。そもそも能力を手に入れた直後のパートをほとんど省いて(元々はここも作るつもりだったんでしょう)いきなり現実を受け入れた状態で中盤が始まる。この時点でけっこう本作ヤバいんじゃないかなとは思いました。ヒーローのオリジンを語るのにバッサリ重要な部分をカットしてしまうんですから。ザシングの葛藤とか、異形の者の苦しみなんてまだリブート前のシリーズの方がマシにあつかわれてました。百歩譲って個々人のヒーローとしての自覚の芽生えを省略することで(まだこの段階ではチームは結成されておらず、超人たちはバラバラである)ファンタスティック•フォー結成のドラマに厚みを持たせるならば良いのですが、そういった展開もまったくない。ドクタードゥームが突然襲来してきて(ここらへんも必然性皆無でどうしてノコノコ地球に戻ってくるのとかは謎のままです)行き当りバッタリで4人で戦う。前半のキャラ描写の薄さがここにきて響いてきます。ケンカしてた人たちが突然仲直りしてたり、驚きの連続です。アクションもモッサリしていて能力を生かしたバトルというのはまったく見られません。VFXもショボくて迫力がない(というか見せ方が悪い)アクションシーン自体の尺もビックリするぐらい短いです。たぶんお金足りなかったんでしょう。そのせいでこれまでのヒーロー映画にあったカタルシスというものを感じられない。ウジウジ悩んだとしても、能力を開放して自分の信じる正義のために力を尽くすのがヒーローのカッコ良さだと思うのですが、みんな成り行きで戦わされてるようにしか見えないのでまったく好きになれないです。「作戦を立てて協力して戦えば勝てる!」とかリードが言いますが、わりと個人技だし連携ガタガタでたまたま勝ったようにしか見えないのは僕だけでしょうか!?

加えて映画の舞台となる場所が米軍の秘密基地とドクタードゥームさんがお住いの異次元世界だけなので規模がデカいお話の割に非常にコンパクトな見た目です。世界観の広さを感じられないし、そのせいで余計にバトルもショボくて陳腐に思える。ストーリー展開に必然性がなく、とりあえずファンタスティック•フォー結成までお話まとめたいのでキャラクターたちを動かしました、といった雰囲気の物語。この作品を「ひとつの家族が完成するまでを描いた綿密な人間ドラマだ」と擁護する意見も見たのですが、僕には必要なシーンを飛ばしまくって脚本家の都合でキャラを動かしているようにしか読み取れなかったので、そもそもドラマとしても成立していないと思います。せめてカッコよくて印象に残るカットやアベンジャーズ的な"アッセンブル"の画があるとまた違ったのでしょうが、それもなくて。唯一ドクタードゥームが研究所で暴れまわるシーンは容赦なく結構残酷に人を殺していたので良かったかも(ここでようやく作品のテンションが上がるのですが、あっさり殺されて特に見せ場もなく終わりました)

ホントにガタガタ過ぎる映画。ぜったいどこかひとつぐらい良いポイントあるだろうとおもったらそれすらなかったので絶望です。試写会もお通夜状態でした。ハリウッドが大作をかけてマーベルブランドのもとここまで酷いのが作られてしまうのかととてもショックでした。全然フォローする気になれないんですが、とりあえず内容語れる友達と一緒に観に行けばそのあと飲みながら愚痴で盛り上がるぐらいのことはできると思います。炎上必須の超珍作なのでリアルタイムでみれば良い思い出になるかも。
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