かたゆき

クーデターのかたゆきのレビュー・感想・評価

クーデター(2015年製作の映画)
3.0
外国人は皆殺しだ――。
東南アジア某国。転職を機に、愛する妻とまだ幼い2人の娘と共にこの地に赴任してきたジャック。
11時間にも及ぶフライトを終え、会社が用意した高級ホテルの一室にチェックインした彼らは、新たな地で人生の再スタートを切るはずだった。
だが、翌日、ジャックは街の異変をすぐに感じ取る。
中断されたままのテレビ、いつまで経っても接続されないネット、街を忙しなく行き交う軍部隊、不穏な住民たち…。
やがて、〝彼ら〟がジャックの目の前に現れるのだった。
鉈やピストル、軽機関銃で武装し、外国人抹殺を叫ぶ血走った目の暴徒たちが…。
すぐさま家族と共に脱出を図るジャックだったが、街は一夜のうちに彼らに占拠されていた。
はたしてジャックたち家族は無事に国外へと脱出できるのか?

パッケージやキャスティングからいかにもB級感ぷんぷんのそんな本作なのですが、ピアーズ・ブロズナンが出ているということで今回鑑賞してみました。
冒頭こそ、これぞアジアでございと言わんばかりののっぺりとしたカメラワーク、無意味なスローモーションの多用等々先が思いやられていたのですが、暴徒と警官隊が暴動を起こしてからはもう畳み掛けるように続くアクションシーンの連続にけっこう惹き込まれて観ている自分がいました。
何をするか分からない残虐非道な暴徒たちが暴れまわる中、幼い2人の娘と共に決死の覚悟で逃げ惑う主人公に素直にハラハラドキドキ。
救援に来たと思いきやいきなり銃を乱射してくるヘリコプターの襲撃に始まり、隣のビルに乗り移るために娘を無理やり放り投げたり、家族と一緒に死体に隠れて敵を遣り過ごしたり、変装して小さなバイクに乗り込んだ彼らが群集が暴れまくる夜の街に繰り出したり……。
と、なかなかハードなアクションの連続で観客をぐいぐい惹き込む展開はなかなかのもの。

「これは思わぬ掘り出し物かも!?」と思いながら観ていたのですが、後半息切れしたのか、アクションが幾分かスケールダウンしてしまったのが残念でした。
特に僕は、P・ブロズナン演じるCIA職員ハモンドの薄っぺらさが気になりました。
国際政治の裏舞台で常に死と隣り合わせで生きてきたスパイはもっと冷徹であってしかるべき。
それが、「俺たちのせいだから君たち家族を全力で助けてやる」と命まで投げ打って主人公家族を救出するというのはさすがに甘すぎやしませんか。
このハモンドの行動にもう少し説得力を持たせてほしかった。
と、そこらへんが気になりましたが、それでも娯楽作としては充分水準に達していたと思います。
第三世界を舞台にした、重厚な軍事アクションとして観て損はないでしょう。
かたゆき

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