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奇跡のひと マリーとマルグリットのWILDatHEARTのレビュー・感想・評価

4.6
『与えることと受け取ること』


マルグリットはマリーのために自分の持てる限りの労力と努力を惜しみなく与えた。
それによってマリーはこの世に言葉(概念)があることを知り、観念のない暗黒の孤独の世界から救い出された。

それ故、不治の病に冒され余命幾許(ばく)も無いマルグリットを看病しその最期を看取ろうとするマリーの気持ちは人間としてごく自然なものであったと思う。

にもかかわらずマルグリットがマリーを拒絶したのは何故なんだろう。


ヒントは修道院に預けられたマリーが久し振りに両親と再会するシーンにあると思われる。両親と抱き合うマリーを見たマルグリットはいたたまれない様子で逃げるように部屋を出て行くのである。
きっとマルグリットは親の愛情を知らずに育ち、そのため自分が愛を受けるに値しない人間であるというコンプレックスを抱えて生きてきたのではないだろうか。

もとより素晴らしい実話であるが、マルグリットが最終的には自分の運命を受け入れ、そしてマリーの愛をも受け入れて人生の終幕を迎えたエピソードはこの物語をより美しい高みへと押し上げる極上のクライマックスであった。



翻って、我々がこの地上で大切な人と共に過ごすことの出来る時間はあまりに短いという真実に思い到る。
生きているうちに受け取った愛に報いることが出来ればいいのだけれど。
そしてそれ以前に、願わくば、誰かが贈ってくれた愛を忌憚なく受け取ることの出来る真っ直ぐな心で居られる自分で在りますようにと祈らずには居られない。 
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