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スティーブ・ジョブズのzunzunのレビュー・感想・評価

スティーブ・ジョブズ(2015年製作の映画)
3.9
3つプレゼンテーションの直前のやり取りを描いた映画なので、圧倒的な会話量によって一見ストーリーは動いているように見えるが、時代や場面が変わっているだけで、ストーリーはまったく動かない作品。会話もすべて堂々めぐりで、「認めろ!認めない!」のやり取り。スティーブ・ジョブズの困った側面は、傲慢さや現実歪曲など幾つかのキーワードがあるが、それが彼の生い立ちに原因があるのでないかと匂わせる。

もちろん彼の偉大な功績は前提として、実際に起きたエピソードや理念がそこかしこに散りばめられているが、ジョブズの極端な一面だけをクローズアップした作りの作品なので、伝記映画と言うより映画の中で創作されたスティーブ・ジョブズ像を見せられているような気がした。
そんなスティーブ・ジョブズを演じたのがマイケル・ファスベンダー。顔は似てないのに雰囲気は似てるのが素晴らしい。
ケイト・ウィンスレットの微妙なおばちゃん感も最高に良い。
役者さんの演技が素晴らしいので、少し難解な作品なのに最後まで飽きずに観られた。

作品の冒頭は『2001年宇宙への旅』の作者アーサーc.クラークのインタビューから始まるのだが、『2001年宇宙への旅』の監督スタンリー・キューブリックも完璧主義者で偏屈な人だった。天才=偏屈者って考えはしたくないけど、絶対的な自信家で妥協を許さない独裁者タイプが多いのも事実。
スティーブ・ジョブズをオーケーストラの指揮者に例えると、「自分はろくに演奏も出来ないくせに、独裁的な立ち振る舞いで罵声を浴びせながら楽器を奏でるエンジニア達を困らせまくる」そんな感じだ。
でも彼の理念やビジョンは全くぶれない。時代や技術がやっと彼の先見性やアイディアに追いついた感じなんだろうか…
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