とうがらし

今朝の秋のとうがらしのレビュー・感想・評価

今朝の秋(1987年製作の映画)
4.2
山田太一×笠智衆三部作の3作目。

長野県の蓼科で悠々自適な暮らしをする老人。
息子(杉浦直樹)の死期が迫っていると聞いて、東京へ行く。
息子は妻(倍賞美津子)との関係が微妙で、妻は病床に伏す夫のことを忘れようと、ブティック店の経営でバリバリ働いている。
老人も元妻(杉村春子)との関係が希薄。
元妻は居酒屋店を経営していて、息子とも全然会っていなかった。
息子は父の誘いに乗って、病院を抜け出し、蓼科へ駆け落ち。
とっくに綻んでいる家族が、息子の死を前にして蓼科に集まる。
たとえそれが、にせものの一家団欒、幻の家族の絆と分かっていても…という話。

「錯覚しそうだな。家族っていいなって」

倍賞美津子、樹木希林、杉村春子。
女優陣が最強の布陣。
なかでも杉村春子。
笠智衆と杉村春子による元夫婦の喧嘩は職人芸。

物干しに始まり、物干しに終わる。
山田太一×笠智衆三部作のうち、最も小津色を感じられるのは本作。
家族で縁側を囲む夏の夜に、喜びと悲しみが入り混じる。
この一幕は、「万引き家族」を彷彿とさせる。
学生の頃から山田太一を敬愛している是枝裕和監督。
もしかすると「万引き家族」を構想する際に、本作を参考にしたのかもしれない。
「ながらえば」「冬構え」「今朝の秋」三部作がすべて名作というモンスター級のドラマシリーズだった。
とうがらし

とうがらし