菩薩

セントラル・パークの菩薩のレビュー・感想・評価

セントラル・パーク(1989年製作の映画)
4.5
「自由」の国アメリカの、その最も栄えた街のど真ん中に存在する、造られた「エデンの園」であるセントラルパーク。その管理された「自由」を謳歌する主役は、もちろんその管理に多額の出資をする白人富裕層である。300万ドルの予算があるからとテニスコートに隣接するクラブハウスの建て替えについての論争を交わす一方で、今日も黒人ホームレス達はゴミ箱を漁る。「自由」とは言えそこは偽りのエデンの園であり、この公園には既に「罪」が存在している。だが人々は罪を罪と知りながらも、それを犯し罰を受ける。芝生の上に上半身裸で寝そべる白人男性、その芝生に自転車で乗り入れ荒らす人々、管理組合は「見つけられない」と嘆くが、この映画にはバッチリ映されている。公園の隅の屋根のある場所で、掻き集めた新聞紙を敷き詰め睡眠を取る黒人男性、彼はこの偽りの「自由」からは排除される。「平和」の為だとルールも守らずTシャツの販売に執念を燃やす活動家、思想弾圧だ!何が自由の国アメリカだ!と嘆くが、少しばかり自由を履き違えてはいないか。街の為に公園があるのではなく、公園の為に街があるとでも言いたげな過激な思想を展開する管理者、公園の為の出資は市民にとっては当たり前の義務だと言いたげだが、それが利用者の特権化に繋がる危険性は感じないのか。これがおそらくかつての「自由の国」の生の姿、そして30年を経た今新作で明らかにされるアメリカの姿はどう進歩しているか、同性愛者のパレードに向けての「同性愛者恐怖症」の落書きは、しっかりと市民の心の中から消されただろうか。
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