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ヒトラー暗殺、13分の誤算のCOZY922のレビュー・感想・評価

ヒトラー暗殺、13分の誤算(2015年製作の映画)
3.6
独裁者ヒトラーの暗殺計画は単独犯と組織的なものを合わせ少なくとも42回はあったらしい。組織的企てである『ワルキューレ』は映画で観て知っていたが、それ以外にも後に”黒いオーケストラ” と呼ばれた、軍人, 政治家, 官僚, 文化人など多数が関与するグループによるクーデター&暗殺計画など、当時のドイツの中やヒトラーに近い軍の内部にまで、国や人々の状況を憂い その元凶ヒトラーを何とかしようとした試みがあった。

本作は、そんな数多くの計画のうち一般人ゲオルク・エルザーによる単独の計画と実行を取り上げたもの。平凡な家具職人の彼がなぜそこまでの行動に至ったのか、未遂に終わったとはいえ一般人がどうやって実行にまでこぎつけることができたのかが、拷問による自白強要や回想シーンによって如実に描かれていた。

個人による計画はかなり無謀なように思えるけれど、それは数十年も経ち平和な今だから感じることなんだと思う。当時のドイツはそれ以前から国全体を悩ませていた失業問題・貧困に加え、ヒトラーの過激な暴力を伴う政治活動, ユダヤ人迫害, ナチスによる殺戮などで尋常でない状況であり、行動を起こさないといずれ皆 死に追いやられるという思いが彼を突き動かしたのだろう。

プライベートな描写の一部はフィクションのようですが暗殺計画は史実なので、歴史を知り行動を起こすことの意味を知り、戦争や独裁の時代を招かないよう1人1人が考えるという観点で、残酷だけど観てよかったと思う。

邦題は必ずしも物語全体を捉えておらず原題『Elser』のほうがぴったりくる。これでは何の話かわからないしシンプル過ぎ、というなら『ヒトラー暗殺、ゲオルク・エルザーの信念』とかでは どうだろうか?
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