柚子

黄金のアデーレ 名画の帰還の柚子のレビュー・感想・評価

4.0
第二次世界大戦中ナチスによって奪われた、グスタフ・クリムトが描いた一枚の叔母の肖像画をめぐり、オーストリア政府を相手に返還訴訟を起こした実話の物語。

この裁判の意義は単なる財産の所有権争いといった個人的な問題にとどまらず、民族と国家の誇りを賭けた闘いだった。

オーストリアの市民によるユダヤ人の迫害の様子や、さらに奪われた絵画の所有権を巡ってはそれらの事実を隠蔽しようとする政府の対応はショッキングであり唖然とした。
過去のことだ、もう触れるのはやめろといった圧力は被害者を追い詰め臭い物に蓋をするだけ。
戦後何十年経ってもなお引きずられる戦中の価値観を見せつけられ、戦争によって奪われたのは絵画だけではなかったのだと痛切に感じた。

被害者が被害を告発する勇気、加害者が過去の罪と向き合う勇気をこの映画から学ぶことができたように思う。
かつて戦争に加わった国の国民として、重く受け止めていきたい。
柚子

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