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怪物はささやくのShinMakitaのレビュー・感想・評価

怪物はささやく(2016年製作の映画)
3.2
窓から見える丘の上に、イチイの木が立っている…13歳のコナーは、その木を眺めながら暗く沈んだ毎日を送る少年だ。クラスではイジメに遭い、父親は離婚してアメリカに住んでいる。そして、癌に侵された母は体力が弱り彼の面倒はみられない。だからコナーは毎夜空想に耽り、現実逃避を試みていた。
ある夜…12時07分。イチイの大木がヒトの形をした怪物となってコナーの前に現れた。怪物は、これから3回現れて、その都度物語を聴かせてやるという。そして4回目に現れたときには、コナー自身が「真実の物語」を語るのだと言ってきた。あまりにリアルな怪物の存在に面喰らうコナーだったが…



「怪物はささやく」。

「永遠のこどもたち」を絶賛し、「インポッシブル」を2013年のベストワンにした、かなりの〈バヨニスト〉である私にとって、JAバヨナ監督の新作を観るのは義務に等しい。ってわけで行きましたよ、みゆき座へ。

結論を言いますとね、これはなかなか良いっすよ。「離婚して身勝手な母親に感情移入できない」とか「コナーの暴走がやりすぎ」とかレビューに書いてる理性的な良い子ちゃんや、単なるファンタジーを観に来たつもりの間抜けさんには、この映画に描かれるコナーの痛みは理解できねぇだろうな。これはさ、あまりに過酷な現実にさらされた13歳が抱える心の闇や自責の念に寄り添って、「ありのままでいいんだよ。それが人間なのだから」と声をかけてくれる映画なんだよ。コナーだけじゃない、彼の一家全員の〈不完全さ〉、〈相反する矛盾した感情〉を肯定してくれる優しい映画なわけ。ふつうに親に愛され、嫌な思いも不幸も経験せずに大人になった人には絶対に分からない作品だと言っておきましょう。コナー役の男の子もいい演技だし、何より祖母役のシガニー・ウィーバーが最高。そしてやっぱりバヨナはデキる監督です。ラストの12時07分で俺は滂沱の涙でした。とにかくオススメ!


以下ネタバレ


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ラスト…母リジーが残したスケッチブックの中身について、どう解釈するのが正しいんでしょうね?
コナーが小さいときに、きっとリジーがあの怪物と3つの物語を語り聴かせていたんじゃないかなと俺は思うんだよな。その記憶が微かに残ってて、コナーの空想として現れたんじゃないかなと。ま、そこはどうでも良いんだけどね。
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