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ワンダーウーマンのchiakihayashiのレビュー・感想・評価

ワンダーウーマン(2017年製作の映画)
3.9
 この映画についてはいろいろ議論があったけれど、私がほぉ!と思ったのはまず、アマゾン族の女優さんたち。ヒロインのダイアナ/ワンダーウーマンの母親である女王や、ヒロインを厳しく鍛える叔母で将軍の存在感がハンパない! それもそのはずで、女王役はデンマーク出身で、同国のスサンネ・ビア監督の『ある愛の風景』(2004)でそのナチュラルな美しさが印象的だったコニー・ニールセン。将軍役は、最近の女性監督の作品で言えばアンヌ・フォンテーヌ監督の『美しい絵の崩壊』(2013年、これは邦題がミスリーディング)で親友の息子と恋に落ちる役柄を演じたロビン・ライト。その他の戦士たちは、実際にボクシングのチャンピオンだったり武術家だったり、五種競技や陸上競技のアスリートたちが乗馬や剣術をトレーニングして演じているので、その迫力もハンパない。

 ワンダーウーマンが国連名誉大使を解任された争点がオトコのスケベな目線を狙ってるからということだとしたら、この導入部のタッチをもっと全編に活かせばよかったかも、と思うけど、さすがに原作を展開する以上、そうはいかないし、何よりもそれでは男性観客がコワがって引くでしょう。

 現実世界から隔絶されて天真爛漫に育ったヒロインは、かつてアマゾン族を奴隷にした−−−−ヒロインの母親の女王が仲間を率いて反乱を起こし、自由を勝ち取ったという前史がある−−−−軍神アレスを倒し、世界に平和をもたらすのを自らの使命とする理想主義者にして天然ピュアなハートの持ち主。そんなヒロインのロマンスのお相手は正統派のイケメンでは務まらない。だから、キャスティングされた男優さんはいわゆる王子様顔ではなくて、言ってみればトッポジージョ顔(いえ、私は好きですが)。だから、2人のやりとりにおのずとユーモアが醸し出される仕掛け。

 そりゃそうだよね、正統派の美女と美男のラブロマンスを成立させるには、第一、ヒロインが強すぎる(笑)。それにどう考えたってこの設定でマジにラブロマンスするわけにはいかないよね、見てるこっちが小っ恥ずかしくなるもの。

 でもって、その彼が最後「僕は今日を救う、君は世界を救え」という言葉を残して、わが身を犠牲にする。これまでのヒロインなら、よよと泣き崩れるところがダイアナは怒りを爆発的なパワーに変えて宿敵の軍神アレスを倒す−−−−。この時の彼女の悲しみと怒りは、言葉にすれば「あなたと私は明日からも世界に平和をもたらすために共に闘うはずだったじゃない!!!」というもので、まさしく対等な同志的な愛ならでは。

 かくて、ハリウッド映画では強いヒロイン像をめぐるせめぎ合いが起きているのだけれど、日本だとアニメやライトノベルでオトコたちが萌えるヒロイン像はさる批評家が名づけた「戦闘美少女」、つまりオトナじゃないってのはどう考えればいいのかしらん?
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