l

リリーのすべてのlのネタバレレビュー・内容・結末

リリーのすべて(2015年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

エディ・レッドメインの素晴らしさを存分に感じられる作品で、映像作品としてもとても好き。

ただ、観終わったあとに「トランス女性をトランス女性が演じていないこと」への違和感を感じなかった自分に、私は理解してるようで全然わかってないんだなぁと思った。指摘されていることでようやく気づくという。
女性を女性が演じる、男性が男性を演じる、トランス女性はトランス女性が演じる。
でも実際これが「当たり前」とされる現状ではない。

じゃあ「演じる」ってどういうこと…?とも思ったりしたけれど、あくまで前述したことが「必然」な世界であることが重要で、そういう世界で「今回はエディがその役を演じる」というのが本来あるべき姿なのだろうな。

そうは言っても、何も考えてなかった私は作品の中に入り込んだし、鑑賞後のことも含め、得られるものは大きかった。

・ストッキングを履いて、サンダルを履いて、ドレスを当て、リリーが感情を静かに爆発させながらみているその視界に胸がぎゅっとなった。自分の身体に女性の服を当てるということ自体だよね。頭の中で思い描いたりはたまたキャンバスに描いたりするのと、「自分の身体に当てる」というのはもう感じ方が別次元だと思う。それを目の当たりにするエディの表情は素晴らしかった。
あのモデルになる日以前の、アイナーとして過ごしてる時のちょっとした視線なんかも、感情がそのまんまに伝わってくるようで。

・「彼が私の中のリリーを見つけてくれた」と思っていたらアイナーをみていたと分かった時のショックはかなり悲痛だ…
(てかベン・ウィショー出てるって知らなくてベンウィショさん見えた瞬間に脳内が「ウィショさん!!」となった笑 なんだろう、ほんとにそんなかんじで笑)

・「本当の女になったのか?こどもができるのか?」って言われるのも…ウィショさん…となったけど、これグサグサに刺さっただろうなぁ...…
実際男性器を切除して膣を形成したとしてもその時点でこどもが望めるわけじゃないからなぁ…「一歩ずつだ」と先生が言っていたように、肉体を変えるというのは形だけ変えて解決、ではないんだよなと思って胸が苦しくなる。
それでもね、リリーがやっと女になれたと涙するところも、気持ちが急いて2回めの手術を受けようとする気持ちも誰にも止められないし否定できない。
命をかけてでも手術をする、というよりも、ただただリリーの願いのすべてなのだよなぁ。
「医者が君を女にしたのか?」の問いに「神が私を女にしたの」「先生は私の間違ったからだを直してくれている」と答えたところが忘れられない。間違いをただ正して「当たり前」に自分になるための選択なのよね。

・ゲルダの立場になるとこちらもまた辛いところなんだけれど。リリーが生まれた時から感じてきた「当たり前に正しい身体でいられない」「ありのままでいられない」苦しみを封じ込めて男性として人生を送ってきたことを想うと、ゲルダに対してはかなり自己中心的だとは思うけれどもどうしても批難する気持ちにはなれないんだよなぁ。

・本来あるべき姿になれたことで、ようやく苦しみから解放されたというような、羽ばたいていくラストはどうしたって涙がでた。それを見つめるゲルダの表情も、ここまでのことを考えると彼女の心の内を推し量って涙がでてしまう。

( あれ?ご本人はデンマークの方なんだ...それもまた... )

初見 : 3.7 like3
l

l