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リリーのすべてのziziのレビュー・感想・評価

リリーのすべて(2015年製作の映画)
4.5
これは、すごい。

エディの本気を見た。いや、ホーキング博士の時からすごいなこの人とは思ってはいましたが、英国人俳優は本当の意味でみんな実力派です。
アリシアヴィキャンデルも、エクスマキナといい、素晴らしい。

それにしてもこれが実話だなんて胸が痛すぎる。2016年の今でこそ様々な偏見や差別が彼らを突き刺しているのに、1900年代初頭に彼がやったことは、とても勇気のいることだと思う。
「本当の自分になりたい。自分が自分であると信じられるように」
人間の根本的な欲求なのに、医学的にも価値観的にも時代の先を行き過ぎた彼らに、当時の世間は容赦なく「狂人」の一言で片付けてしまう。たとえ解ってくれる人がいても、当時の医学技術ではヴェイナーとリリーを救えなかった。

でも心を揺さぶるのは、そんな彼が決して独りで戦っていたわけではなかったことだ。
ゲルダは素晴らしい妻であり、同時に天才女流画家だ。彼女は彼の中の美しさ、彼の内に隠された宝石を誰よりも最初に見抜き、それをキャンバスに表してゆく。受け止め難い現実に涙しながらも。
もちろん女の彼女にとって、夫でなくなってゆき、異性として愛した人が自分を異性としては愛してくれないなんて耐え難いことだ。
でも画家としての彼女は、ヴェイナーの美的価値を無意識に受け止め尊敬している。だからこそ彼女はどんなに辛くてもリリーの絵を描きつづけた、彼女の中にも妻という肩書きの他にもう1人の自分、画家という自分がいたからだ。

そんな2人のあの美しいラストには涙せずにはいられない。


1930sというわたし好みの建物や衣装、アートサロンパーティ、ヨーロッパのきれいな風景、美男美女たち。
ベンウィショーは安定の最高さなんだけど
今作の目玉はマティアス。マティアスやばい。今作で初めて知った俳優ですが、あの包容力と油断できない危なさ加減が最高。不倫したい。

と心の声が漏れてしまったけど純粋に美しい秀作です。
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