Mariko

リリーのすべてのMarikoのレビュー・感想・評価

リリーのすべて(2015年製作の映画)
4.5
女性向け映画。主人公は奥様な気がする。
2つくらいいいな〜って思うことがあったのだけれど、

まず、複数の気持ちや変化を表現できている所。
例えばリリー(アイナー)であれば、
妻を愛する気持ち、でもその愛が異性愛ではなくかけがえのないものへの愛に変わっていったりまた戻ったり、混在して自分でもわからなくなったり、というような表現。
妻ゲルダの、夫を愛する気持ち、憎む気持ち、夫が夫で無くなっても愛したいと思う気持ち、女性としてリリーを守りたいという母のような愛の気持ち、というような表現。
色んな気持ちを行ったり来たりしているのがものすごく感じられる映画で、単純に凄さを感じた。

そして、「名付けることの出来ない」関係性の可視化。
人間属性に頼って生活してる方が楽だから、
「自分はオンナで、あいつはオトコで」と処理してる。
「私達は好きって伝え合ったから"コイビト"ね」とか。
でも実際には名付けることの出来ない現象が沢山あると思う。
個人の特性でも、性癖でも、人との関係性でも。
でもそれが名付けられないことはコワイことだから、
避けがち。でもいつ「自分が何者かわからなくなる」ことが
来るかわからないし、「今のところ言葉のない」ものに
打ち当たったり、それを好きになったりするかもわからない。
そういう世の中にあるリアルさを映像にしていて、
とても真実に近い感じがした。

変化を描くのってとっても難しいから、
ラブストーリーも「つき合う・結婚」までがゴール
みたいなものが多い中で、どんどん関係性が変容して、
最終的には「別れる」みたいになってしまうんだけど、
人間誰しも、「つき合う時」が幸せなのは当然で、
分かち合いたいのは気持ちの変化による悲しみのはず。
それが体現されていて、すごくよかった。
Mariko

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