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リリーのすべてのmatsuboのレビュー・感想・評価

リリーのすべて(2015年製作の映画)
4.0
自分もトランスなのでトランスジェンダーものには弱いのです。

序盤の女装を始めたばかりのリリーの幸福そうに輝く表情に心が躍り、女性の身体のラインを出そうと鏡の前に立つシーンに切なくなりました。

中盤はリリーとゲルダの混乱する様子が描かれます。どちらにも相手を傷つけるような言動があります。
私はリリーに感情移入していたので、自分のためにアイナーであるよう少しは努力してよと迫るゲルダに、自分が自分であることを否定しないでやってよと思ったし、リリーとはキスの思い出に対する温度が違っているハンスを連れて来るなんてなんと残酷なことをするんだ! と思ってしまいました。

終盤は性別適合手術(当時は性転換手術)をすることになったリリーを支えるゲルダの愛が描かれます。
リリーの夢のくだりはリリーパートからの流れなら号泣ものだったでしょうが、終盤はゲルダパートだったので、ややリリーが身勝手に感じられました。
リリーとしてゲルダにプロポーズしなおす夢で、ゲルダに応えてあげて欲しかった。

本当ならこの二人は、映画『イミテーション・ゲーム』でジョーンがアランに提案したようなカップルになれていたのに。今の時代であれば。

それにしても、エディ・レッドメインの演技は素晴らしかったですが、美しすぎてトランスジェンダーというテーマ性は超越してしまったかも。それだけ美しければなんだっていいじゃんという感じで。
バランス的には『わたしはロランス』の方が共感はしやすいでしょうね。

エンドクレジットでの役名の表記が、Einar/Lili ではなくただ Lili となっていたことにウルっときました。

邦題の『リリーのすべて』は『オール・アバウト・マイ・マザー』からの連想でしょうか。
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