OASIS

ソレダケ that’s itのOASISのネタバレレビュー・内容・結末

ソレダケ that’s it(2015年製作の映画)
4.1

このレビューはネタバレを含みます

戸籍を奪われ闇の世界で生きる男・大黒が、監禁された先で風俗嬢の阿弥と出会い二人で新たな生活をスタートさせるという話。
監督は「狂い咲きサンダーロード」等の石井岳龍。

石井岳龍のマグマの様に溢れ出る作家性、灼熱の如く疾走するソウルが融合する唯一無二な世界観。
中二病的な設定も、とことんにまで突き詰めて極めればお洒落と認めざるを得ない、有無を言わさない魅力を放つ「BLEACH」的なオサレ感覚。
ロックバンド「bloodthirsty butchers」からの猛烈なラブコールを受けてそのロック魂を注入したという本作は、bloodthirsty butchersの曲が劇中で何度も使用されMVの様な仕上がりで「狂い咲きサンダーロード」の再来とも言える、好きな人はとことん好きな作品になってしまう事間違い無しな強烈なカルト映画臭を放っている。

街のアンダーグラウンドを這いずり回る様に底辺の暮らしを送る大黒は、裏社会の調達屋である恵比寿から金品を奪い、その際に裏ビジネスの獲物となりそうな顧客の個人情報が入ったハードディスクを手に入れる。
恵比寿に監禁された大黒は、同じく監禁されていた風俗嬢の阿弥と出会い脱出、追手からの逃亡を図る。
モノクロの映像とキャラクターの暑苦しいまでの顔面を真正面から捉えたスピード感溢れるカメラワーク等、ソレダケで画面から伝わる熱量が凄まじい。

大黒と阿弥が出会い惹かれ合って行く過程、敵の殺し屋・千手の激しい拷問による真っ赤な流血等、モノクロ故の刹那的な切なさや過激な暴力表現は映像とマッチ。
特に、マスクを被った千手の手下達が街に佇むカットの格好良さったら無かった。
立ち位置、配置、構図、靡く風等全ての要素が完璧に近いレベルで重なり合っていた。
まぁそれが結局ただの格好付けの為だけに存在していて、手下一人一人の強さや魅力が描かれる訳では無いが、その瞬間だけは「ヤバイ相手を敵に回してしまった」という恐怖が確かに伝わって来た。

中盤、過去から未来へと、そしてモノクロからカラーへと変わる瞬間に止まっていた世界がにわかに動き出す場面の美しさは撃ち抜かれたような衝撃に息をのむ。
千手のアジトに殴り込むシーンでコミックの絵が所々挿入され、爆音で流れる音楽と濁流の様に押し寄せる映像が合わさって頭の中がパンクしそうなほど血が沸騰する。
そんな熱を冷ますかのような悲恋的な展開を見せるクライマックスは若干落ち着きを取り戻し冷ややかな視線で見ていたが。

主演の染谷将太は世の中を悲観し死んだ様に生きる男大黒をお馴染みの死んだ眼で熱演し、千手役の綾野剛は静けさの中に狂気を孕んだヤバイ奴を好演していたが、阿弥役の水野絵梨奈がそれに負けず劣らず抜群に良かった。
顔立ちがちょっと昔の沢尻エリカっぽくて、泣いたり喚いたり、弱さを見せる場面でも芯の強さを感じさせる堂々たる演技で、彼女の演技にいちいち感情を動かされてしまうほど最高であった。
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