naorin

ストックホルム・ペンシルベニアのnaorinのレビュー・感想・評価

3.3
タイトルそのまま、
ペンシルベニアが舞台の
ストックホルム症候群に陥った
犯罪被害者の少女と
その家族の葛藤を描いた作品。

終始息が詰まって
酸欠気味の99分間でした。

4歳の時に誘拐された娘が
17年ぶりに帰ってきたからといって
簡単に元に戻れるはずもなく。
まぁ娘の無表情拒否っぷりも
母親の中盤からの狂いっぷりも
どっちも若干大げさには感じた。
ただ父親へのイライラ感は絶妙、
気持ちはわかるが立ち回り下手すぎ。
浮気の匂わせといい
ここだけなんか妙にリアル。

気まずい空気の中
手探りで答えを探しても
全てがうまくいかず衝突、
拒絶、孤立し、追い詰められ、
また衝突、まさに負の連鎖地獄。
いっそベンがしたように
「傷つけ合ったのはおあいこだろう」
と言いくるめればよかったのかな?
でも憎くてたまらない犯人を
罵ることすらできない中
「大事にされてた!育ててくれたの!」
とまで言われちゃったら
余裕なんか持てないよねお母さん...
娘は娘で、もうどうしたって
彼女はレイア以外の何者でもなかった
のだから仕方ないのだけど。

悪いのは犯人。
裁かれることはもう決定済み。
しかし彼の罪は
もはや彼だけのものではなく
多くを巻き込み、歪め、壊し、
果てに最悪の結末へと導く。
犯罪とはそういうもの、
罪状だけが全てではないのだと
改めて実感した。

窓のない地下の部屋から
窓はあるけど自由のない2階の部屋へ。
そして窓から抜け出し、もう
“誰のものでもなくなった”彼女は
次、どこで窓を閉ざすのか。
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