こーた

光をくれた人のこーたのレビュー・感想・評価

光をくれた人(2016年製作の映画)
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傷痍軍人、帰還兵。
戦争の傷痕が、まだ生々しい時代、死はいまよりもずっと身近だった。
絶海の孤島に、ふたつの海が打ちよせる。そのぶつかる音が、騒がしい。
波のざわめきが、男の心をかき乱す。
女の天真爛漫が、誠実な男を惑わす。
それは光というよりも、魔性だ。
横溝正史あたりが書いたら、いまにも禍々しい連続殺人事件の幕が開きそう。
そんな舞台背景を、灯台の光がやさしくつつみこむ。

日記、詩集、手紙。
これは「読まれる」ことを強く意識した物語ではなかったか。
たった一葉の手紙が、だれかの世界をがらりと変える。
そのみじかい文章が、だれかの人生を明るく照らす。
そのだれかの物語が、わたしに港をしめす、道標となる。
文字こそ光だ。
わたしも映画に仮託して、だれかに手紙を書いているのかもしれない。
それはちゃんと届いているだろうか。
ひとの人生を明るく照らす、灯台のような文章。そんな文章を、わたしも書けていたら、いいな。